公認会計士の修了考査とは?試験内容・受験資格・難易度をわかりやすく解説
公認会計士試験(短答式試験・論文式試験)に合格すると、「これで公認会計士になれる」と思う方も多いのですが、実はそうではありません。公認会計士として登録するためには、試験合格後に「修了考査」という試験にも合格する必要があります。
この記事では、公認会計士を目指し始めた方や、公認会計士試験に合格したばかりの方に向けて、修了考査とは何か、誰が受験できるのか、どんな試験内容なのか、そしてどのくらい難しいのかを、公認会計士がわかりやすく解説します。
修了考査とは何か(公認会計士資格取得までの位置づけ)
まず、修了考査が公認会計士になるまでのどの段階にあるものなのかを整理しておきましょう。
公認会計士になるまでの4つのステップ
公認会計士として登録するまでには、大きく分けて次の4つのステップがあります。
- 公認会計士試験(短答式・論文式)に合格する
- 実務経験を積む(監査業務等に2年以上従事する)
- 実務補習を受け、修了考査に合格する
- 日本公認会計士協会に登録する
このうち、公認会計士試験に合格した段階では、まだ「公認会計士」ではありません。試験合格者は「公認会計士試験合格者」という立場であり、公認会計士として名乗って業務を行うためには、上記2~4のステップを踏む必要があります。修了考査は、この3つ目のステップに出てくる試験です。
修了考査は実務補習の最終試験
「実務補習」とは、公認会計士試験合格者が、実務に必要な知識や技能を身につけるために受ける講習制度のことです。実務補習は「実務補習所」という機関で行われ、通常は3年間、会計・監査・税務・経営・職業倫理といった分野の講義や課題(考査)に取り組みます。
修了考査は、この実務補習の内容を身につけられているかどうかを確認するために、実務補習の最後に実施される試験です。位置づけとしては、実務補習という「学び」の期間の卒業試験・修了試験にあたるものだとイメージするとわかりやすいでしょう。
修了考査に合格しても公認会計士になるにはもう1つ要件がある
ここで注意したいのは、修了考査に合格しただけでは、まだ公認会計士として登録できないという点です。公認会計士として登録するには、修了考査の合格に加えて、上記の「2年以上の実務経験」の要件も満たしている必要があります。
実務経験は公認会計士試験合格の前後どちらの期間でもカウントされる仕組みになっているため、多くの人は実務補習・修了考査と並行して(あるいはそれ以前から)実務経験を積んでいます。そのため、実際には「修了考査に合格した時点で、実務経験の要件もすでに満たしている」という人が多数派です。
このように、修了考査は公認会計士になるための「最後の関門」ではありますが、正確には「実務経験」と「修了考査合格」の両方がそろって初めて、日本公認会計士協会への登録・公認会計士としての名乗りが可能になる、という点を押さえておきましょう。
受験資格(実務経験・実務補習の要件)
修了考査は誰でも受けられる試験ではなく、一定の受験資格が必要です。
実務経験(2年以上)とは
実務経験とは、監査法人や企業などで、監査業務や会計に関する業務に一定期間従事することを指します。制度上は2年以上の実務経験が公認会計士登録の要件とされています。前述のとおり、この実務経験は公認会計士試験合格の前後を問わずカウントできるため、試験合格前に監査法人等で実務経験を積み始めている人も少なくありません。
実務補習(通常3年・短縮制度あり)とは
実務補習は、実務補習所が実施する講習制度で、標準的には3年間のカリキュラムが組まれています。講義の受講や課題(考査・レポートなど)への取り組みを通じて、単位を積み重ねていく仕組みです。
一定の条件(大学院での関連プログラムの履修状況や実務経験の内容など)を満たすことで、実務補習の期間が短縮できる制度も設けられています。短縮の要件は個々の状況によって異なるため、自分が対象になるかどうかは、日本公認会計士協会や在籍する実務補習所の公式情報で確認するのが確実です。
受験資格を満たすタイミングの注意点
修了考査を受験するためには、原則として実務補習の課程を修了した(または修了する見込みがある)ことが必要です。つまり、公認会計士試験に合格しただけでは受験できず、実務補習で必要な単位等を満たしていることが前提になります。
実務補習の進み方やスケジュールは年度・個人の状況によって変わるため、「自分がいつ修了考査を受験できるのか」については、実務補習所からの案内や日本公認会計士協会の受験案内を必ず確認するようにしましょう。
試験内容・出題科目
続いて、修了考査の試験内容を見ていきましょう。
試験は2日間・5科目構成
修了考査は、例年12月中旬の土曜・日曜の2日間にわたって実施されます。出題科目は次の5科目です。
- 会計に関する理論及び実務
- 監査に関する理論及び実務
- 税に関する理論及び実務
- 経営に関する理論及び実務(コンピュータに関する理論を含む)
- 公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理
1日目に「会計」「監査」、2日目に「税」「経営」「職業倫理」という形で科目が振り分けられ、それぞれ数時間の試験時間が設けられています。ただし、実施日程や試験時間は年度によって変更される可能性があるため、正確なスケジュールは受験する年度の「修了考査受験案内」(日本公認会計士協会が公表)を必ず確認してください。
各科目でどんな内容が問われるか
出題内容をざっくりと整理すると、以下のようなイメージです。
- 会計:財務諸表の作成・開示や会計処理に関する理論・実務上の判断
- 監査:監査業務の実務(監査手続、監査報告書の作成など)に関する理論・実務
- 税:法人税・所得税・相続税など、税務実務に関する幅広い知識(修了考査の中でも学習量が多いとされる科目)
- 経営:財務諸表分析などの経営分析、およびITやコンピュータに関する基礎知識
- 職業倫理:公認会計士としての法規・行動規範・職業倫理に関する知識
公認会計士試験(論文式試験)で学んだ内容と重なる部分もありますが、修了考査ではより実務に近い視点での出題が特徴です。実務補習で扱う教材や答練(模擬試験形式の演習)を通じて、実務上の判断力を養っていくことになります。
試験当日の持ち物・準備
修了考査は長時間・複数科目にわたる試験のため、当日の持ち物や準備を事前に整えておくことも合格のために大切なポイントです。受験票・電卓・筆記用具などの必須アイテムから、あると便利なものまで、当日の持ち物については以下の記事で詳しくまとめていますので、受験が近づいたらぜひ参考にしてください。
合格率・難易度
修了考査は「公認会計士試験に比べれば易しい」と言われることもありますが、決して簡単な試験ではありません。
例年の合格率の目安
修了考査の合格率は、公認会計士試験(短答式・論文式)の合格率と比べると高めの水準で推移してきたと言われており、例年おおむね7~8割程度とされてきました。ただし、ここ数年は合格率が下がる傾向にあり、6割台まで下がる年度も見られるようになってきています。
合格率は年度によって変動するため、この記事の数値はあくまで目安としてご理解ください。正確な最新の合格率や試験結果については、日本公認会計士協会が公表している「修了考査の結果」等の公式情報を必ず確認するようにしましょう。
修了考査が「簡単ではない」と言われる理由
修了考査の合格率が公認会計士試験より高めとはいえ、次のような理由から油断できない試験だと言われています。
- 出題範囲が広い:会計・監査・税・経営・職業倫理と5科目にわたり、特に税務は学習量が多くなりやすい
- 実務との両立が必要:多くの受験生が監査法人等での実務(監査業務のピーク期を含む)と勉強を並行して進める必要がある
- 相対的に「落ちる人もいる」試験である:近年は合格率の低下も指摘されており、実務補習の内容を漫然と受けているだけでは合格が難しくなってきているとされる
こうした背景から、実務補習の課程の中で早めに準備を始めることが重要になります。
合格までの勉強法・対策のポイント
最後に、修了考査に向けた勉強法・対策の考え方を紹介します。
早期からのスケジューリングが重要
修了考査は実務と並行して準備を進める必要があるため、直前にまとめて勉強する形では対応しきれないことが多いです。実務補習で配布される教材や、資格予備校が提供する修了考査対策講座の答練(演習問題)などを、できるだけ早い時期から少しずつ進めておくことが、合格への近道になります。
科目別の対策の考え方
科目ごとに難易度や必要な学習量には違いがあります。一般的には、税務実務は出題範囲が広く学習量が多くなりやすいため重点的に対策する受験生が多いとされます。一方、監査実務や職業倫理は、日々の監査業務の中で自然と触れる機会が多い分野でもあるため、実務経験を活かしながら効率的に対策できる科目だと言われています。自分の実務経験の内容や得意・不得意を踏まえて、学習の配分を調整するとよいでしょう。
実際の勉強法の詳細
より具体的に「どの科目にどれくらいの時間をかけたか」「答練をどう使ったか」といった実践的な勉強法については、以下の記事で詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。
まとめ
この記事のポイントを整理すると、以下のとおりです。
- 修了考査は、公認会計士試験合格後に受ける実務補習の最終試験であり、公認会計士登録の要件の1つである
- 受験するには、実務補習の課程を修了(または修了見込み)していることが前提となる。加えて登録には2年以上の実務経験も必要
- 試験は例年12月に2日間・5科目(会計・監査・税・経営・職業倫理)で実施される
- 合格率は公認会計士試験より高めの傾向があるものの、例年7~8割程度とされ、近年は低下傾向も指摘されている。最新の数値は日本公認会計士協会の公式発表を確認すること
- 出題範囲が広く実務との両立も必要なため、早期からのスケジューリングと科目特性に応じた対策が合格の鍵になる
修了考査は、公認会計士としてのキャリアの「最後の関門」とも言える試験です。この記事で全体像をつかんだうえで、試験当日の持ち物や具体的な勉強法についても、関連記事もあわせて確認しながら、計画的に準備を進めていきましょう。