「自社の業務システムを開発してもらったけど、この支払いは何の勘定科目にすればいいの?」「まだ開発中だけど、支払った分はもう費用にしていいの?」

自社で使う業務システムやアプリを、社内のエンジニアに作ってもらったり、外部の開発会社に発注したりするケースは、中小企業や個人事業主でも珍しくありません。ただし、市販のパッケージソフトを購入するのとは違い、「開発」には着手金・中間金・検収時の支払いなど複数回の支払いが発生したり、完成までに数か月〜数年かかったりするため、会計処理に迷う方が多いのが実情です。

この記事では公認会計士が、自社利用目的のシステムを開発した場合・外部に開発を委託した場合の勘定科目と会計処理を、具体的な仕訳例を交えてわかりやすく解説します。

なお、市販のパッケージソフトやクラウドサービスを「購入・契約」した場合の勘定科目については、以下の記事で金額別に詳しく解説していますので、そちらもあわせてご覧ください。


システム開発費は「資産」と「費用」のどちらになるのか

資産計上と費用処理の違い(おさらい)

まず、簿記・会計の基本的な考え方を確認しておきましょう。

  • 資産計上:支払った金額を「無形固定資産(ソフトウェアなど、形はないが長期間使う資産)」として一度資産に計上し、使用する期間にわたって少しずつ費用(減価償却費)に振り替えていく処理
  • 費用処理:支払った金額を、その年・その事業年度の費用として全額計上する処理

パッケージソフトの購入であれば「金額がいくら以上か」でおおむね判定できましたが、システム開発の場合はそう単純ではありません。そのシステムが将来、事業にどの程度確実に役立つと言えるかという観点も判定に関わってくるためです。

システム開発費における3つの区分と本記事の対象範囲

会計の実務上、ソフトウェア・システムの開発費は、目的によって大きく3つに区分されます。

区分内容
自社利用目的のソフトウェア自社の業務(経理・生産管理・顧客管理など)のために開発するシステム
市場販売目的のソフトウェア開発した後に不特定多数へ販売する(パッケージソフトとして売る)ためのシステム
受注制作のソフトウェア特定の顧客から注文を受けて、その顧客に納品するために開発するシステム(いわゆる「受託開発」を請け負う開発会社側の売上に関する処理)

本記事は、自社の業務のためにシステムを開発する、または外部の開発会社に発注する事業者・個人事業主を想定しているため、主に「自社利用目的のソフトウェア」の考え方を中心に解説します。開発会社として他社から開発を請け負っている場合の売上・原価の処理(進行基準など)は異なる論点になるため、本記事の範囲には含みません。


自社利用目的のソフトウェア開発の考え方(将来の収益獲得・費用削減にどの程度確実に貢献するか)

資産計上できる場合の考え方

自社利用目的のソフトウェアは、そのシステムによって将来、収益の獲得または費用の削減に確実に貢献すると認められる場合に、無形固定資産として資産計上するという考え方が基本になります。

たとえば、次のようなケースは資産計上の対象になりやすいと考えられます。

  • 受注管理システムを開発し、これまで手作業だった業務を自動化して人件費を明確に削減できる
  • 顧客向けの予約システムを開発し、新たな売上の獲得に直接つながる
  • 既存の基幹システムを刷新し、業務効率化の効果が具体的に見積もれる

費用処理すべき場合の考え方(研究・検討段階、効果が不確実な場合)

一方で、次のようなケースは、将来の効果が不確実なため、費用として処理する(その年・その期の費用にする)のが基本的な考え方です。

  • まだ企画・要件定義の段階で、実際にシステム化するかどうかも決まっていない
  • 新しい技術の検証を目的とした試作(プロトタイプ)で、実際に業務で使うかは未定
  • 開発してみたものの、効果が見込めず社内で使用しないことが決まった

このように、「開発費だから必ず資産計上しなければならない」というわけではなく、そのシステムが事業にどの程度確実に役立つと見込まれるかによって判断が変わる点がポイントです。

個人事業主・中小企業における実務上の目安

もっとも、「将来の収益獲得・費用削減の確実性」を厳密に評価するのは、上場企業のような規模の大きい会社を想定した考え方です。個人事業主や、会計監査を受けていない中小企業の実務では、次のような目安で判断されることが多いです。

  • 完成後1年以上にわたって使用する予定であり、開発費用も一定額以上まとまっている場合は、原則として資産計上を検討する
  • ごく小規模な改修(既存システムへの軽微な機能追加など)で金額も少額な場合は、費用処理(修繕費・業務委託費など)で済ませることも実務上は多い

どちらの取り扱いにするか迷う場合は、開発内容・金額を整理したうえで、顧問税理士・会計士に相談することをおすすめします。


受託開発・外部委託の場合の勘定科目

外部の開発会社にシステム開発を依頼するケース

自社に開発できるエンジニアがいない場合、外部のシステム開発会社に発注して、自社利用のシステムを作ってもらうことは一般的です。この場合も、先ほど説明した「資産計上するか、費用処理するか」の考え方自体は変わりません。支払先が社内(人件費)か社外(外注費)かは、勘定科目の種類が変わるだけで、資産計上の判定基準そのものには影響しません。

「受託する側」(開発会社自身)の処理は異なるテーマ

なお、もしご自身が開発会社の立場で、他社からシステム開発の依頼(受託開発)を受けて開発費用の会計処理に悩んでいる場合は、本記事とは異なる論点になります。受託開発は「売上」に関する処理(工事の進行に応じて売上を計上する進行基準など)が中心となるため、別途専門的な整理が必要です。本記事は、あくまで発注する側(システムを自社利用するために依頼する側)の処理を解説しています。

委託費用の勘定科目候補(外注費・業務委託費・ソフトウェア仮勘定)

外部の開発会社への支払いについて、よく使われる勘定科目の候補は次のとおりです。

勘定科目使われる場面
外注費開発作業そのものを外部に発注した費用として計上する場合(費用処理する場合、または資産計上前の一時的な仕訳で使う場合)
業務委託費外注費と同様の意味合いで使われる科目。開発以外の業務委託と合わせて管理したい場合に使われることが多い
ソフトウェア仮勘定資産計上する予定のシステムについて、開発が完成するまでの間、支払った金額を一時的にためておく資産の勘定科目(詳しくは次の章で解説)

最終的に資産計上する予定であれば「ソフトウェア仮勘定」、費用処理する予定であれば「外注費」または「業務委託費」を使うのが基本的な整理になります。どちらを使うか迷う場合は、まず開発するシステムが資産計上・費用処理のどちらに該当するかを先に判断してから、勘定科目を選ぶとよいでしょう。


資産計上する場合に使う勘定科目(ソフトウェア/ソフトウェア仮勘定)

「ソフトウェア」(無形固定資産)とは

資産計上すると判断したシステムが完成し、実際に使用を開始した後は、「ソフトウェア」という無形固定資産(形はないが長期間使用する資産)の勘定科目で計上します。ソフトウェアは、耐用年数(資産として使用できると見込まれる年数)にわたって減価償却(費用として少しずつ計上する手続き)を行います。

自社利用目的のソフトウェアの耐用年数は、国税庁の基準で原則5年とされています。開発した業務システムも、一般的にはこの「自社利用」に該当するため、5年で償却するケースが多くなります。

なお、市販のパッケージソフトを購入する場合には、10万円未満は消耗品費、30万円未満は中小企業の特例など、金額による処理の分岐がありますが、自社で開発する・開発を発注するシステムは、金額の大小だけでなく「将来の効果の確実性」で資産計上の有無を判断するという点が、単純な購入とは異なります。金額基準の詳しい考え方は、以下の記事も参考にしてください。

「ソフトウェア仮勘定」とは何か、なぜ分けて使うのか

システム開発は、着手から完成まで数か月〜数年かかることが多く、その間に何回かに分けて支払いが発生します。このとき、まだ完成していない開発中の支払額を一時的にためておく資産の勘定科目が「ソフトウェア仮勘定」です。建物の建築中に使う「建設仮勘定」と同じような役割を持つ科目だと考えるとイメージしやすいでしょう。

開発中の支払いをいったん「ソフトウェア仮勘定」に計上し、システムが完成して使用を開始したタイミングで、まとめて「ソフトウェア」に振り替えます。


開発が完了していない「仕掛中」の期間の処理方法

なぜ完成前は減価償却しないのか

減価償却は、「資産を使用することで、その効果を得ている期間」に費用を配分する手続きです。開発中の(まだ完成しておらず、実際に使用できていない)システムは、そもそも事業のために使用できていないため、この段階では減価償却を行いません。 そのため、開発中の支払額は「ソフトウェア仮勘定」として資産に計上したまま、償却せずに保持しておきます。

完成・使用開始のタイミングの考え方

減価償却を開始するタイミングは、システムが完成し、実際に業務で使用を開始した時点です。実務上は、次のようなタイミングを「完成」の目安とすることが多いです。

  • 開発会社からの検収(納品されたシステムが要件どおりに動作するかを確認する手続き)が完了した日
  • 社内での本番運用(実際の業務での利用)を開始した日

検収が完了していても、社内的な準備が整わずすぐに使い始めない場合もあるため、自社の実態に合わせて「実際に使用を開始した日」を基準にするのが基本的な考え方です。

開発を途中で中止した場合の処理

開発の途中で、方針変更や技術的な問題などにより、システム開発そのものを中止することもあります。この場合、それまで「ソフトウェア仮勘定」にためていた金額は、資産としての価値がなくなるため、費用(ソフトウェア開発関連の除却損など)として処理します。

(例)ソフトウェア仮勘定300万円を計上していた開発プロジェクトを中止した場合

(借方)固定資産除却損 3,000,000円 /(貸方)ソフトウェア仮勘定 3,000,000円

開発中止は金額も大きくなりやすいため、決算時に開発プロジェクトの進捗状況を必ず確認しておきましょう。


具体的な仕訳例(委託費用の支払い時・完成時)

ここでは、外部の開発会社に業務システムの開発を委託し、最終的に資産計上するケースを例に、一連の仕訳を確認しましょう。仕訳とは、取引の内容を「借方(かりかた・左側)」と「貸方(かしかた・右側)」に分けて記録する簿記の基本ルールです。

外部委託の着手金・中間金を支払った場合

(例)開発会社に着手金100万円を銀行振込で支払った場合

(借方)ソフトウェア仮勘定 1,000,000円 /(貸方)普通預金 1,000,000円

その後、開発の進行に応じて中間金を支払う場合も、同様に「ソフトウェア仮勘定」で計上します。

(例)中間金150万円を支払った場合

(借方)ソフトウェア仮勘定 1,500,000円 /(貸方)普通預金 1,500,000円

システムが完成し、ソフトウェアへ振り替える場合

検収が完了し、システムの使用を開始したら、それまで積み上げた「ソフトウェア仮勘定」を「ソフトウェア」へ振り替えます。

(例)検収完了時に残金150万円を支払い、システムの使用を開始した場合

【残金支払い】
(借方)ソフトウェア仮勘定 1,500,000円 /(貸方)普通預金 1,500,000円

【ソフトウェアへの振替(仮勘定の合計4,000,000円を振替)】
(借方)ソフトウェア 4,000,000円 /(貸方)ソフトウェア仮勘定 4,000,000円

完成後、減価償却を行う場合

使用を開始した後は、耐用年数(自社利用の場合は原則5年)にわたって減価償却を行います。

(例)ソフトウェア400万円を、耐用年数5年で毎年均等に償却する場合(1年分)

(借方)減価償却費 800,000円 /(貸方)ソフトウェア償却累計額 800,000円

なお、外部委託ではなく自社の従業員が開発を担当した場合は、開発に直接関わった人件費や、開発のために購入した材料・外部サービス費用などを集計し、同じように「ソフトウェア仮勘定」→「ソフトウェア」の流れで資産計上を検討します。ただし、人件費の集計は実務上の手間が大きいため、個人事業主や中小企業では、金額が大きく影響が明らかな場合を除き、簡便的に処理しているケースも少なくありません。


まとめ

システム開発費の勘定科目に関するポイントを整理します。

  • システム開発費は、市販ソフトの購入とは異なり、金額だけでなく「将来の収益獲得・費用削減にどの程度確実に貢献するか」で資産計上か費用処理かを判断する
  • 効果が確実に見込める自社利用システムは無形固定資産「ソフトウェア」として資産計上し、耐用年数(原則5年)で減価償却する
  • 効果が不確実な企画・検証段階のものは、費用(外注費・業務委託費など)として処理する
  • 外部の開発会社への委託費用も、資産計上する予定なら「ソフトウェア仮勘定」、費用処理する予定なら「外注費」「業務委託費」を使う
  • 開発が完成していない「仕掛中」の期間は減価償却を行わず、「ソフトウェア仮勘定」として保持し、完成・使用開始のタイミングで「ソフトウェア」に振り替える
  • 開発を途中で中止した場合は、それまでの仮勘定を除却損などの費用に振り替える

自社利用のシステム開発は金額も大きく、判断に迷いやすい領域です。この記事の考え方を参考にしつつ、資産計上の要否に迷う場合や、金額が大きいプロジェクトについては、顧問税理士・会計士に事前に相談しておくと安心です。

なお、市販のパッケージソフトやクラウドサービスを購入・契約した場合の勘定科目については、以下の記事で金額別に詳しく解説しています。「開発」ではなく「購入」のケースで迷っている方は、あわせてご覧ください。


本記事は一般的な会計処理の考え方の解説です。資産計上の要否や金額基準の適用など、個別のプロジェクトの実態によって判断が異なる場合がありますので、詳細は顧問税理士・会計士にご確認ください。

【筆者プロフィール】現役監査法人勤務の公認会計士。副業のブログ・アフィリエイトで青色申告を自ら実施。CPAラボ(cpalabo.com)にて会計・簿記・キャリア・お金に関する情報を発信中。