「簿記3級に挑戦してみたいけど、勉強時間はどれくらいかかるんだろう?」「簿記の知識がまったくないけど、独学でも間に合う?」

簿記(ぼき)とは、日々の取引を帳簿に記録し、会社やお店の経営成績・財産状況を明らかにするための技術です。簿記3級はその入門レベルにあたる資格で、学生・新社会人から転職やキャリアアップを考える社会人まで、幅広い層が最初に挑戦する検定です。

この記事では、監査法人に勤務する現役の公認会計士が、簿記3級合格に必要な勉強時間の目安と、初めて簿記を学ぶ方でも実践しやすい勉強スケジュールを解説します。


簿記3級の合格に必要な勉強時間

まず、簿記3級合格に必要な勉強時間の目安を整理します。簿記3級には工業簿記(こうぎょうぼき、製造業の原価計算を扱う分野で、2級から出題範囲に加わります)は含まれず、商業簿記(しょうぎょうぼき、日常的な商取引の記帳を扱う分野)のみが出題範囲です。そのため上位級と比べると学習範囲は限定的ですが、前提知識と学習方法によって必要な時間は変わります。

前提 独学 通信講座・スクール
簿記の知識が完全に初めて 100〜150時間 50〜100時間
学生時代に授業で少し触れた・電卓操作に慣れている 70〜100時間 30〜50時間

仕訳(しわけ、取引の内容を「借方(かりかた)」「貸方(かしかた)」という左右2つの側面に分けて記録する簿記の基本ルール)や勘定科目(かんじょうかもく、取引の内容を分類するための名前。たとえば現金なら「現金」、商品の売上なら「売上」など)に初めて触れる方は、この複式簿記(ふくしきぼき、ひとつの取引を左右2つの側面から記録する簿記のルール)独特の考え方に慣れるまで時間がかかりやすい傾向があります。一方、学生時代の授業で軽く触れたことがある方や、電卓操作(桁数の多い数字の入力・早打ち)に慣れている方は、基礎固めの時間を短縮しやすいです。また、通信講座を使うと出題ポイントを効率的に学べるため、独学より時間を短縮できるのが一般的です。

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1日の勉強時間別の期間の目安(初めて学ぶ場合・独学)

1日の勉強時間 目安期間
30分 7〜10ヶ月
1時間 3〜5ヶ月
2時間 1.5〜2.5ヶ月
3時間以上 1〜1.5ヶ月

初めて簿記を学ぶ場合、無理なく続けられる現実的なラインは1日1〜2時間・2〜3ヶ月程度です。学生の長期休みや、転職活動前にまとまった時間を確保できる方は、1日3時間以上のペースで1〜1.5ヶ月程度に短縮することも可能です。

なぜ人によって勉強時間に差が出るのか

簿記3級で必要な勉強時間に差が出る主な要因は、次の2つです。

  • 簿記の知識が完全にゼロかどうか:仕訳・勘定科目・借方貸方という考え方自体に初めて触れる方は、最初のルール習得に時間がかかります
  • 電卓操作への慣れ:試験時間内に多くの取引を処理する必要があるため、電卓の早打ちに慣れているかどうかで演習スピードが変わります

これらに加えて、実は簿記3級は「昔と比べて難易度が上がっている」という側面もあります。詳しくは後述します。


スケジュール別プラン

2ヶ月プラン(1日2時間)|初めて学ぶ方に最もおすすめ

無理なく継続でき、初めて簿記を学ぶ方に最もおすすめのプランです。

1ヶ月目:仕訳の基礎固め

内容
1週目 複式簿記の仕組み・仕訳のルール(借方・貸方)
2週目 現金預金・商品売買(三分法)の仕訳
3週目 手形・電子記録債権債務・固定資産・税金の仕訳
4週目 帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・補助簿)・伝票会計、1ヶ月の復習

2ヶ月目:決算・過去問演習

内容
1週目 決算整理仕訳(貸倒引当金・減価償却・売上原価の算定など)
2週目 精算表・財務諸表の作成
3週目 過去問・予想問題演習(1〜3回分)
4週目 苦手分野の復習・直前対策

1ヶ月プラン(1日3〜4時間)|短期集中で取りたい方向け

学生の長期休みや、転職活動前にまとめて時間を確保できる方向けのプランです。

  • 1週目:仕訳の基礎(現金預金・商品売買・手形・固定資産・税金)を一気にインプット
  • 2週目:帳簿・伝票会計のインプットと基礎問題演習
  • 3週目:決算整理・精算表・財務諸表作成の演習
  • 4週目:過去問演習・模擬試験・弱点補強

2週間プラン(1日6時間以上)|とにかく早く取りたい人向け

有給休暇や連休を使って一気に取得したい方向けの、かなりハードなプランです。

  • 1週目:仕訳〜決算整理までの全範囲をインプット
  • 2週目:問題演習・過去問演習・直前対策

簿記の知識が完全にゼロの状態から2週間で合格を目指すのは、ハードルが高いプランです。可能であれば「1ヶ月プラン」をベースに計画し、直前の追い込み期間として2週間集中する使い方がおすすめです。


「3級は簡単」というのは過去の話?2019年度の出題範囲改定に注意

「簿記3級は独学でも数日〜1週間程度で取れる簡単な資格」という情報を見かけることがありますが、これは主に2019年度の出題範囲改定より前の情報である可能性があります。

2019年度、日本商工会議所は簿記検定の出題区分表を改定しました。この改定により、消費税の処理(税抜方式、商品代金と消費税を分けて記帳する方法)、電子記録債権・電子記録債務(でんしきろくさいけん・さいむ、手形に代わる電子的な決済手段に関する債権・債務)、クレジット売掛金、訂正仕訳(仕訳の誤りに気づいたときに、修正のための仕訳を追加で記録する処理)など、従来は2級で扱っていた論点の一部が3級の範囲に加わりました。

その結果、以前の3級と比べるとやや学習量が増えていると言われています。「3級=誰でもすぐ取れる」というイメージだけで臨むと、想定より苦戦することもあるため、最新の出題範囲を踏まえて余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。なお、簿記検定には3級のほかに2級・1級もあり、試験の種類や全体像については以下の記事でも解説しています。


おすすめの学習ツール

CPAラーニング(無料)

CPA会計学院が提供する無料の学習プラットフォームです。簿記3級の講義動画が無料で見放題のため、初めて簿記を学ぶ方が「自分に合うかどうか」を確認する入り口として最適です。

独学で進める場合は、テキストや電卓など最低限の準備も必要になります。何を揃えればよいか迷う方は、以下の記事もあわせてご確認ください。

→ CPAラーニング公式サイト(https://www.cpa-learning.com/)

スタディング(有料・コスパ重視)

スマホひとつで隙間時間に学習できる通信講座です。1講義が5〜10分程度と短く区切られているため、通学・通勤時間などのちょっとした空き時間にも取り組みやすいのが特徴です。初めて簿記を学ぶ方でも、講義動画から問題演習へと流れに沿って進められるため、独学にありがちな「何から手をつければいいかわからない」状態になりにくいメリットがあります。


勉強時間を短縮する3つのコツ

①インプットよりアウトプットに時間を割く

テキストを読むだけでは仕訳のルールは身につきません。基本例題を解いたら、同じ範囲の問題演習を最低3回は繰り返し、解答パターンが自然に浮かぶまで演習することを意識しましょう。

②電卓操作に早めに慣れておく

簿記3級は限られた試験時間の中で、多くの取引を素早く正確に計算する必要があります。電卓のブラインドタッチ(画面を見ながら手元を見ずに操作すること)に早い段階で慣れておくだけでも、演習・本番のスピードが大きく変わります。

③独学の「わからない時間」を通信講座で減らす

独学の最大のロスは、理解できない箇所で長時間止まってしまうことです。通信講座を使うと動画講義でつまずきをすぐに解消できるため、独学より時間を短縮しやすくなります。独学を続けるかどうか迷っている方は、以下の記事で独学のメリット・デメリットを確認したうえで判断するのもおすすめです。


初心者がつまずきやすいポイント

①複式簿記・仕訳の考え方に最初は違和感がある 「なぜ取引を左右(借方・貸方)に分けて記録するのか」という複式簿記の考え方は、初めて学ぶ方の多くが最初につまずくポイントです。無理に理論から理解しようとせず、まずは「現金が増えたら借方」といったパターンを問題演習で数多くこなし、慣れてから理屈を後付けで理解する進め方でも十分合格を目指せます。

②勘定科目の分類を覚えられない 勘定科目の数は決して多くありませんが、それぞれが資産・負債・純資産・収益・費用のどのグループに属するかを覚えないと、仕訳の借方・貸方を正しく判断できません。一覧表にまとめて繰り返し目を通す工夫をすると定着しやすくなります。

③スケジュール通りに進まず、モチベーションが続かない 仕事や学業の忙しさで計画が崩れることは珍しくありません。「遅れたら取り戻す」より、最初から余裕を持たせたスケジュールを組み、試験の1〜2週間前には過去問演習に入れるよう逆算しておくことが大切です。


まとめ

簿記3級の勉強時間についてのポイントを整理します。

プラン 1日の勉強時間 期間 向いている人
2ヶ月 2時間 2ヶ月 初めて学ぶ方に最もおすすめ
1ヶ月 3〜4時間 1ヶ月 学生の長期休み・短期集中派
2週間 6時間以上 2週間 有給・追い込み期間の活用

まず無料のCPAラーニングで学習をスタートし、効率を上げたい場合はスタディングの活用を検討してみてください。

簿記3級はCBT方式(テストセンターのパソコンで随時受験できるコンピューター試験)と統一試験(年3回:6月・11月・翌2月に実施される紙の試験)のいずれかで受験できます。出題範囲・合格基準はどちらの方式も同じです。CBT方式なら自分の都合に合わせて受験日を設定できるため、スケジュールを組んでから受験日を予約する進め方がおすすめです。

簿記3級で学ぶ知識は、資格取得そのものだけでなく、家計や副業の支出管理などにも直接役立ちます。実際の活用イメージは以下の記事でも紹介しています。

3級合格後、経理職への就職・転職を考えている方や、より実務に近い知識を身につけたい方は、簿記2級にステップアップするのもおすすめです。


※本記事の勉強時間の目安は一般的な目安であり、個人の学習経験や生活環境によって差があります。試験制度・出題範囲の最新情報は日本商工会議所の公式サイトでご確認ください。

【筆者プロフィール】現役監査法人勤務の公認会計士。CPAラボ(cpalabo.com)にて会計・簿記・キャリア・お金に関する情報を発信中。