「新NISAやiDeCoを始めようと思うけれど、楽天証券とSBI証券、結局どちらの口座を開けばいいのかわからない」——資産形成の第一歩として、証券会社選びで立ち止まっている方の声をよく聞きます。

楽天証券とSBI証券は、どちらも口座数が業界トップクラスのネット証券で、新NISA(投資で得た利益が非課税になる制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金。自分で掛金を出して運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金制度)の取扱商品・手数料の面でも、甲乙つけがたいほど充実しています。だからこそ「結局どちらがいいのか」で迷ってしまう方が多いのも事実です。

この記事では、公認会計士が手数料・取扱商品・ポイントサービス・アプリの使いやすさなど複数の軸で両社を比較し、断定的な優劣ではなく「どんな人にどちらが向いているか」という視点で整理します。なお、証券会社の手数料やポイント還元率は改定されることが多い項目です。本記事の数値は執筆時点の情報のため、実際に口座開設を検討する際は、必ず各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。


楽天証券とSBI証券の比較早見表

まずは、両社の主な違いを一覧表で確認しましょう。詳しい内容は、この後の各見出しで解説します。

比較項目 楽天証券 SBI証券
口座開設・維持費 無料 無料
NISAつみたて投資枠の対象本数 約280本(2026年3月時点) 約280本(2026年3月時点)
NISA成長投資枠の対象投資信託数 約1,500本(同時点) 約1,500本(同時点)
米国株式の取扱銘柄数 5,000銘柄超 5,000銘柄超
国内株式の売買手数料 条件を満たせば無料(ゼロコース) 条件を満たせば無料(ゼロ革命)
クレカ積立の還元率(目安) 楽天カードで1〜2%程度 三井住友カードで0.5〜3%程度
貯まる・使えるポイント 楽天ポイントのみ Vポイント・Pontaポイント・dポイントなどから選択
iDeCoの運営管理手数料 無料 無料
単元未満株サービス かぶミニ(リアルタイム取引が可能) S株(取扱銘柄数が多い)
銀行連携サービス マネーブリッジ(楽天銀行と連携) SBIハイブリッド預金など(住信SBIネット銀行と連携)

一見してわかるとおり、口座維持費や国内株式の手数料、NISAの取扱商品数といった基本的な部分では、両社にほとんど差がありません。違いが出やすいのは、ポイントサービスやクレカ積立の還元条件、アプリの操作感といった「使い勝手」の部分です。


証券会社選びが新NISA・iDeCoで重要な理由

比較を始める前に、そもそもなぜ証券会社選びが重要なのかを確認しておきましょう。

新NISA・iDeCoは、いずれも原則として1人につき1つの金融機関でしか口座を開設できない制度です。金融機関を変更すること自体は制度上可能ですが、手続きに時間がかかるうえ、変更のタイミングによっては非課税枠(新NISA)や資産の移換(iDeCo)で余計な手間が生じることもあります。そのため、最初にどの証券会社を選ぶかは、想像以上に重要な判断になります。

まだ新NISAの制度や始め方に不安がある方は、先にこちらで全体像を確認しておくと、この後の比較がより理解しやすくなります。

iDeCoについても、口座を開設する金融機関選びの重要性は変わりません。iDeCoの制度や始め方については、以下の記事で詳しく解説しています。


手数料を比較(国内株式・投資信託・米国株式)

国内株式の売買手数料

国内株式の売買手数料は、楽天証券・SBI証券のどちらも、一定の条件を満たすことで無料になるプログラムを用意しています(楽天証券は「ゼロコース」、SBI証券は「ゼロ革命」という名称です)。かつてはネット証券の代表的な差別化ポイントでしたが、現在はこの2社に関して実質的な差はほとんどなくなっていると言えるでしょう。

投資信託(つみたて投資枠・成長投資枠)の取扱本数

投資信託(複数の投資家から集めたお金をまとめて専門家が運用する金融商品)の取扱本数も、両社ともに業界最多水準で並んでいます。新NISAの「つみたて投資枠」(金融庁が定めた基準を満たす低コストな投資信託に限定して積立投資をする枠)の対象商品は、執筆時点でどちらも約280本です。個別株やより幅広い投資信託にも投資できる「成長投資枠」の対象投資信託も、両社とも約1,500本と、大きな差はありません。

投資信託を選ぶ際に欠かせないのが「信託報酬」というコストです。信託報酬とは、投資信託を保有している間、運用会社に支払い続ける手数料のことで、同じような投資対象であれば信託報酬が低い商品を選ぶのが基本的な考え方です。楽天証券・SBI証券ともに、信託報酬が業界最低水準のインデックス型投資信託(市場全体の値動きに連動することを目指す投資信託)を取り扱っているため、商品ラインナップの面で大きな差をつけるのは難しくなっています。

米国株式の手数料・為替手数料

米国株式に投資したい方にとっては、取扱銘柄数や為替手数料も気になるポイントです。楽天証券・SBI証券ともに、米国株式・ETF(上場投資信託。株式のように取引所でリアルタイムに売買できる投資信託)の取扱銘柄数は5,000銘柄を超え、国内トップクラスの水準にあります。売買手数料も、約定代金の0.495%(税込、上限あり)という同水準の体系を採用しており、条件を満たせば為替手数料が無料になるコースも両社とも用意しています。

高配当ETF(配当利回りの高い銘柄をまとめて保有し、定期的に分配金を受け取れる商品)など、具体的な銘柄選びに関心がある方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。


新NISA・iDeCoでの積立方法を比較

クレカ積立のポイント還元率

新NISAの積立投資では、クレジットカードで積立代金を決済する「クレカ積立」を使うと、決済額に応じてポイントが貯まります。

楽天証券は楽天カードでのクレカ積立に対応しており、一般カードで還元率1%程度、楽天ゴールドカードで2%程度が目安です(投資信託の種類によって還元率が変わる場合があります)。SBI証券は三井住友カードでのクレカ積立に対応しており、一般カードでは還元率0.5%程度にとどまる一方、年会費のかかる上位カード(ゴールドカード・プラチナプリファードなど)を保有し、前年の年間利用額などの条件を満たすことで、還元率が最大3%程度(カードの種類によってはそれ以上)まで上がる仕組みになっています。

つまり、普段使いの一般カードで手堅く還元を受けたいなら楽天証券、すでに三井住友カードの上位ランクを持っている(またはこれから作る予定がある)なら、SBI証券の還元率のほうが有利になる可能性があります。還元率・条件は改定されることが多い項目のため、最新の内容は必ず各社公式サイトでご確認ください。

iDeCoの手数料・取扱商品数

iDeCoを検討している方向けに、金融機関(iDeCoでは「運営管理機関」と呼びます)としての手数料も比較しておきましょう。

iDeCoには、どの金融機関を選んでも共通してかかる手数料(国民年金基金連合会・事務委託先信託銀行に支払うもの。加入時2,829円、毎月171円程度)と、金融機関ごとに異なる「運営管理手数料」があります。楽天証券・SBI証券は、どちらもこの運営管理手数料を無料としており、この点で差はありません。取扱っている運用商品の本数も、両社とも30本台で大きな差はなく、低コストのインデックス型投資信託が充実しています。


ポイントサービス・アプリの使いやすさを比較

ポイントサービス(楽天ポイント vs 複数ポイント制)

ポイントサービスは、楽天証券とSBI証券で仕組みが大きく異なる部分です。

楽天証券は、貯まる・使えるポイントが楽天ポイントに一本化されています。投資信託や国内株式・米国株式の購入代金の一部をポイントで支払う「ポイント投資」(貯まったポイントを使って金融商品を購入できるサービス)に対応しており、普段の買い物で貯めたポイントをそのまま投資に回せる手軽さが特徴です。楽天カード・楽天銀行・楽天モバイルなど、いわゆる「楽天経済圏」のサービスを使っている方には、特に相性のよい設計と言えます。

SBI証券は、Vポイント・Pontaポイント・dポイント・JALマイル・PayPayポイントの中から、自分の生活スタイルに合わせてメインのポイントを選べる仕組みです。選択肢の多さが魅力である一方、メインに設定したポイント以外は貯まらない・使えない点には注意が必要です。普段Vポイントやdポイントをよく使っている方であれば、SBI証券のほうが手持ちのポイントを活かしやすいでしょう。

アプリ・取引ツールの使いやすさ

アプリの操作感は実際に触ってみないとわかりにくい部分ですが、傾向として次のような違いがあります。

楽天証券のスマホアプリ「iSPEED」は、株価の確認・注文・ニュースチェックといった主要な機能が1つのアプリにまとまっており、初めて投資アプリに触れる方でも迷いにくいという評価が多く見られます。SBI証券は、取引の目的に応じて複数のアプリ・取引ツールが用意されており、機能自体は豊富ですが、最初はどれを使えばいいか戸惑う方もいるかもしれません。どちらも実際の評価は高く、はっきりとした優劣がつくものではないため、まずは両方とも口座開設(無料)をしてみて、実際の画面を触って比較するのも一つの方法です。


その他に差が出やすい2つのサービス

銀行連携サービス(マネーブリッジ vs SBIハイブリッド預金)

楽天証券は楽天銀行と連携する「マネーブリッジ」、SBI証券は住信SBIネット銀行と連携する「SBIハイブリッド預金」などのサービスを提供しています。いずれも、証券口座と銀行口座を連携させることで、普通預金に優遇金利が適用されたり、株式・投資信託の買付余力に資金がスムーズに反映されたりするメリットがあります。適用される金利は金融情勢によって変動するため、最新の金利は各社・各銀行の公式サイトでご確認ください。

単元未満株(かぶミニ vs S株)

通常、株式は100株単位(1単元)で購入する必要がありますが、単元未満株サービスを使うと1株から購入できます。楽天証券の「かぶミニ」は、取引時間中にリアルタイムで売買できる点が特徴です。SBI証券の「S株」は、東証上場の約3,800銘柄と取扱銘柄数が多く、売買手数料が無料である点が特徴です。それぞれスプレッド(実質的な手数料に相当する売買価格差)や取引方法など細かな条件があるため、少額から株式投資を試したい方は公式サイトで条件を確認してみてください。

なお、SBI証券はNISA口座でもIPO(新規公開株。新たに証券取引所に上場する企業の株式を、上場前の価格で購入できる仕組み)を購入できるのに対し、楽天証券はNISA口座でのIPO購入には対応していません(執筆時点)。IPO投資に関心がある方にとっては、見逃せない違いです。


こんな人には楽天証券、こんな人にはSBI証券がおすすめ

ここまでの比較を踏まえて、どんな人にどちらが向いているのか整理します。断定的に「絶対にこちらがいい」と言えるものではなく、自分の生活スタイルに合わせて選ぶための目安として参考にしてください。

楽天証券が向いている人

  • 普段の買い物や楽天カードで楽天ポイントを貯めている、いわゆる「楽天経済圏」を使っている人
  • ポイントも証券口座もひとつのサービスにまとめて、シンプルに管理したい人
  • 1つのアプリで株価確認から注文まで完結させたい、初めて投資アプリに触れる人

SBI証券が向いている人

  • Vポイント・Pontaポイント・dポイントなど、楽天ポイント以外のポイントを普段使っている人
  • 三井住友カードの上位ランク(ゴールドカード・プラチナプリファードなど)を持っている、または今後作る予定がある人
  • IPO投資や、より多機能な取引ツールを積極的に使いこなしたい人

楽天証券・SBI証券のどちらを選んでも、新NISA・iDeCoの基本的な非課税メリットを享受できる点は変わりません。「完璧な1社」を探すことに時間をかけすぎるよりも、自分が普段使っているサービスとの相性で選び、まずは口座開設という一歩を踏み出すことのほうが重要です。


まとめ|まずは新NISA・iDeCo口座開設から始めよう

楽天証券とSBI証券の比較のポイントを整理します。

比較軸 楽天証券が合いやすい人 SBI証券が合いやすい人
ポイント 楽天ポイントを普段使っている Vポイント・Pontaポイント・dポイントなどを使っている
クレカ積立 一般的なカードで手堅く還元を受けたい 三井住友カードの上位ランクを保有・検討中
アプリ 1つのアプリでシンプルに管理したい 複数のツールを使いこなしたい
その他 かぶミニでリアルタイム取引をしたい S株の銘柄数の多さ・IPO投資を重視する

手数料や取扱商品といった基本的な部分では、楽天証券・SBI証券ともに業界トップクラスの水準にあり、大きな差はありません。だからこそ、ポイントサービスやアプリの使い勝手など、自分の生活に合った基準で選ぶことをおすすめします。

すでに楽天カードや楽天ポイントを日常的に使っている方であれば、楽天証券は新NISA・iDeCoの口座開設先として有力な選択肢の一つです。口座開設・維持費は無料なので、まずは詳細を確認してみてはいかがでしょうか。

もちろん、SBI証券をはじめとする他の主要なネット証券にも、それぞれ特徴やメリットがあります。手数料やポイントサービスの内容は変更されることもあるため、最終的な選択の前には、比較したい証券会社の公式サイトで最新の情報を確認することをおすすめします。

証券会社を決めたら、次は実際の口座開設や積立設定のステップに進みましょう。新NISA・iDeCoそれぞれの始め方は、前述の記事で詳しく解説しています。証券会社選び以外の投資への不安が残っている方は、投資初心者からよく寄せられる質問をまとめた以下の記事もあわせて参考にしてください。


※本記事の手数料・ポイント還元率などのサービス内容は執筆時点の情報です。最新の情報は各社公式サイトでご確認ください。投資は自己責任で、最終判断はご自身でお願いします。

【筆者プロフィール】現役監査法人勤務の公認会計士。CPAラボ(cpalabo.com)にて会計・簿記・キャリア・お金に関する情報を発信中。