「freeeや弥生の利用料って、経費にしていいの?」「勘定科目は何にすればいいの?」

確定申告のために会計ソフトを契約したものの、いざ記帳しようとすると手が止まる方は多いと思います。会計ソフト自体の使い方は調べればわかりますが、「その利用料をどう記帳するか」は意外と解説が見つかりにくいポイントです。

この記事では公認会計士が、会計ソフトの利用料が経費になるかどうか、そして具体的にどの勘定科目(かんじょうかもく)で処理すればいいかを、個人事業主・法人それぞれのケースに分けてわかりやすく解説します。

勘定科目とは、簿記で取引を記録する際に使う「支出や収入の分類名」のことです。たとえば電話代なら「通信費」、文房具代なら「消耗品費」といった具合に、支出の内容に応じて分類します。この記事を読めば、会計ソフトの利用料をどの分類に入れればよいか迷わなくなります。


会計ソフトの利用料は経費にできるのか

結論から言うと、事業のために使っている会計ソフトの利用料は、経費として計上できます。

必要経費・損金として認められる考え方

個人事業主の場合、経費にできる支出は所得税法上「必要経費」と呼ばれ、国税庁は「その年における総収入金額を得るために直接要した費用」と定義しています。会計ソフトは事業の記帳・確定申告のために使うものなので、この条件を満たし、必要経費として認められます。

法人の場合も同様に、事業活動のために支出した費用は「損金(そんきん)」として法人の利益から差し引くことができます。損金とは、法人税を計算するうえで収益から差し引ける費用のことで、個人事業主の必要経費に近い考え方です。

つまり、フリーランス・個人事業主・法人のいずれであっても、事業の帳簿付けや確定申告・決算のために使っている会計ソフトの利用料は、通常の業務上の支出として全額を経費にできると考えて問題ありません。

プライベート利用と混在している場合の注意点

ただし、次のようなケースでは注意が必要です。

  • 同じソフトを事業用とプライベート(家計簿など)の両方で使っている
  • 家族の個人的な確定申告のためにも同じ契約を使っている

このように事業目的とプライベート目的が混在している場合は、使用割合に応じて按分(あんぶん) することが望ましいとされています。按分とは、支出のうち事業に関係する部分だけを取り出して経費にする考え方です。

とはいえ、会計ソフトは基本的に「事業の記帳」を目的に契約するケースがほとんどのため、実務上は全額を事業の経費として計上している方が多いです。プライベートでの利用実態が明確にある場合のみ、按分を検討すれば十分でしょう。


個人事業主(白色申告・青色申告)の場合の勘定科目

白色申告と青色申告で勘定科目の考え方は変わるか

「白色申告だから」「青色申告だから」という理由で、会計ソフトの利用料の勘定科目そのものが変わるわけではありません。白色申告と青色申告の違いは、主に記帳の方法(簡易な単式簿記か、複式簿記か)や控除額の違いであり、支出をどの勘定科目に分類するかという考え方自体は共通しています。

なお、白色申告で使う「収支内訳書」も、青色申告で使う「青色申告決算書」も、経費の欄には代表的な勘定科目(通信費・消耗品費・雑費など)がすでに印刷されており、当てはまらない支出は空欄に自分で科目名を書き加えることができます。会計ソフトの利用料も、この空欄を使って処理するイメージを持っておくとよいでしょう。

よく使われる勘定科目の候補と選び方

会計ソフトの利用料(月額・年額のサブスクリプション費用)としてよく使われる勘定科目には、次のようなものがあります。

勘定科目考え方
通信費インターネット経由で提供されるクラウドサービスの利用料として計上する考え方。クラウド会計ソフトはオンラインサービスの一種であるため、通信費に含める事業者が多い
支払手数料「サービスの利用料・手数料」として計上する考え方。クラウド会計ソフトに限らず、各種サブスクサービスをまとめて支払手数料で処理している場合はここに含めることが多い
雑費他の勘定科目に当てはまらない、金額的に大きくない支出をまとめる科目。会計ソフトの利用料だけを単独で追うほどの規模でない場合に使われることがある
消耗品費パッケージ版(買い切り型)ソフトを購入した場合など、金額基準を満たす場合に使われる(詳細は後述)

どの科目が「絶対的な正解」ということはありません。 大切なのは、一度決めた勘定科目を毎年・毎月継続して使うことです。年によって通信費にしたり支払手数料にしたりすると、前年との比較がしにくくなり、税務署から見ても支出の把握がしづらくなります。

会計ソフトを初めて導入する場合は、「通信費」または「支払手数料」のどちらかに決めて、以後は同じ科目で統一するのがおすすめです。


法人の場合の勘定科目

通信費・支払手数料・雑費の使い分け

法人の場合も、個人事業主と基本的な考え方は同じです。会計ソフトの利用料は「通信費」または「支払手数料」で処理するのが一般的で、金額が小さく他の費用と統合して管理したい場合は「雑費」を使う会社もあります。

法人では複数のクラウドサービス(会計ソフトのほか、チャットツールやオンラインストレージなど)を契約していることが多いため、社内の経理規程やルールで「クラウドサービス利用料は通信費に統一する」など事前に決めておくと、月次決算や税務調査の際にも説明がしやすくなります。

消費税の経理処理(課税仕入れ)における注意点

freee・弥生・マネーフォワードといった会計ソフトの利用料には、原則として消費税が課税されます。これは「課税仕入れ」に該当するため、消費税の経理処理(税込経理・税抜経理)によって、仕訳に計上する金額の考え方が変わります。

  • 税込経理方式:消費税を含めた金額をそのまま勘定科目に計上する
  • 税抜経理方式:消費税部分を「仮払消費税」として分けて計上する

どちらの方式を採用しているかは会社ごとに決まっているため、既存の経理処理に合わせて記帳しましょう。インボイス制度(適格請求書等保存方式)にも対応した契約であるか、契約時に領収書や請求書の記載事項を確認しておくと安心です。


クラウド型(サブスク)と買い切り型で処理は変わるか

会計ソフトには大きく分けて「クラウド型(サブスクリプション)」と「買い切り型(パッケージ版・インストール型)」の2つの提供形態があります。この違いによって、会計処理の考え方が変わる点に注意が必要です。

クラウド型(freee・マネーフォワード・弥生のクラウド版)の処理

freeeやマネーフォワード クラウド、弥生のクラウド版などは、ソフトそのものを「購入」するのではなく、インターネット経由でサービスを利用する権利(利用権)を契約している状態です。

この場合、ソフトウェアという資産を保有するわけではないため、資産計上は不要で、支払った利用料を都度、全額費用として処理します。前述の「通信費」または「支払手数料」で、支払った期の費用として計上すればよく、金額の大小によって処理が変わることは基本的にありません。

買い切り型(パッケージ版)は金額次第で資産計上が必要になる場合も

一方、弥生の一部製品などに見られる「買い切り型(パッケージ版)」の会計ソフトは、ソフトウェアという資産そのものを購入する形になります。この場合は、取得価額(購入金額)によって処理が変わり、一定額以上であれば「ソフトウェア」という無形固定資産として資産計上し、複数年にわたって減価償却(耐用年数に応じて費用を分割して計上する手続き)する必要があります。

具体的な金額基準(10万円未満は消耗品費、10万円以上20万円未満は一括償却資産、30万円以上は資産計上など)は、一般的な税務上の取り扱いとして目安があるものの、消費税の経理処理方式や中小企業向けの特例の適用有無によって判定が変わるため、注意が必要です。この点は下記の記事で金額別に詳しく解説していますので、パッケージ版を購入した方はあわせてご確認ください。


具体的な仕訳例(初期費用・月額利用料それぞれ)

ここからは、実際の仕訳例を見ていきましょう。仕訳とは、取引の内容を「借方(かりかた・左側)」と「貸方(かしかた・右側)」に分けて記録する簿記の基本ルールです。

初期費用(導入・セットアップ費用)の仕訳

クラウド会計ソフトの契約時に、初期設定サポートなどの「初期費用」がかかる場合があります。これはソフトウェアという資産を取得するものではなく、サービス導入に伴う一時的な支出のため、通常はその期の費用として処理します。

(例)会計ソフトの初期費用20,000円を銀行振込で支払った場合

(借方)支払手数料 20,000円 /(貸方)普通預金 20,000円

月額利用料(サブスク)の仕訳

クラウド会計ソフトの月額利用料を、口座からの自動引き落としで支払った場合の例です。

(例)会計ソフトの月額利用料2,980円(税込)が口座から引き落とされた場合

(借方)通信費 2,980円 /(貸方)普通預金 2,980円

支払手数料で統一している場合は、「通信費」の部分を「支払手数料」に読み替えてください。大切なのは科目の一貫性です。

年払い・複数年契約の仕訳(前払費用)

年払いプランで契約すると割引になる会計ソフトも多くあります。決算日をまたいで1年を超える期間分を一括で前払いした場合は、まだ費用になっていない将来分を「前払費用」という資産として一時的に計上し、期間の経過に応じて費用に振り替える処理が必要です。前払費用とは、将来のサービス提供に対してあらかじめ支払った金額のうち、まだ費用として使い切っていない部分を表す勘定科目です。

(例)年払いプラン35,760円(月額2,980円×12か月)を一括前払いした場合

【支払時】
(借方)前払費用 35,760円 /(貸方)普通預金 35,760円

【毎月の費用振替(1か月分)】
(借方)通信費 2,980円 /(貸方)前払費用 2,980円

ただし、契約期間が決算をまたがず、支払った期の中で使い切る(1年以内に完全に消費する)場合は、簡便的に支払時に全額を費用処理しても実務上は大きな問題にならないケースが多いです。決算をまたぐ年払い契約や、複数年契約の場合は、前払費用としての処理を忘れないようにしましょう。


会計ソフトを選ぶときのポイント

ここまで見てきたとおり、会計ソフトの利用料そのものの経理処理はそれほど難しくありません。むしろ重要なのは、どの会計ソフトを選ぶかです。ソフトによって自動仕訳の精度や、freee・弥生・マネーフォワードといった各社の使いやすさ、サポート体制は大きく異なります。

特に個人事業主・フリーランスの方は、次のような視点で選ぶことをおすすめします。

  • 簿記の知識がなくても迷わず記帳できるか
  • 銀行口座・クレジットカードとの連携がしやすいか
  • 青色申告の65万円控除に対応できる機能があるか
  • 困ったときに相談できるサポート体制があるか

弊ブログでは、公認会計士としての実務経験も踏まえて、弥生・freee・マネーフォワードの3ソフトを実際に比較した記事も公開しています。どのソフトを選べばよいか迷っている方は、あわせてご覧ください。

会計ソフトの導入を検討している方は、まずは無料体験から始めてみるのがおすすめです。




まとめ

会計ソフトの利用料に関するポイントを整理します。

  • 事業のために使う会計ソフトの利用料は、必要経費(個人事業主)・損金(法人)として経費にできる
  • プライベート利用と混在している場合は、使用実態に応じて按分を検討する
  • 勘定科目は「通信費」または「支払手数料」で処理するのが一般的で、白色申告・青色申告・法人のいずれでも考え方は共通
  • 大切なのは科目そのものの正解よりも、一度決めた科目を継続して使うこと
  • クラウド型(サブスク)は全額費用処理でよいが、買い切り型(パッケージ版)は金額次第で資産計上・減価償却が必要になる場合がある
  • 決算をまたぐ年払い・複数年契約は「前払費用」で期間按分する

会計ソフトの利用料の処理に迷ったら、この記事の勘定科目候補を参考に、自分の事業に合った科目を一つ決めて継続して使ってみてください。

なお、会計ソフトの利用料以外にも、確定申告で見落としがちな経費は数多くあります。申告前には、下記のチェックリストもあわせて確認しておくと安心です。


本記事は一般的な会計・税務処理の解説です。金額基準や特例の適用可否など、個別の状況によって判断が異なる場合がありますので、詳細は顧問税理士・税務署にご確認ください。本記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。

【筆者プロフィール】現役監査法人勤務の公認会計士。副業のブログ・アフィリエイトで青色申告を自ら実施。CPAラボ(cpalabo.com)にて会計・簿記・キャリア・お金に関する情報を発信中。