「iDeCoの掛金の上限が2027年から上がるらしいけど、自分の場合はいくらまで拠出できるようになるの?」「上限が増えるのは嬉しいけど、結局何をすればいいの?」

すでにiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用している方や、iDeCoの基本的な仕組みをご存じの方の中には、こうしたニュースを目にして疑問を持った方も多いのではないでしょうか。iDeCoは、自分で拠出した掛金(毎月積み立てるお金)を自分で運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金の制度です。今回話題になっているのは、この毎月の掛金の上限額(「拠出限度額」と呼ばれます)が、2027年から引き上げられるという制度改正です。

そもそもiDeCoの仕組みや始め方、新NISAとの違いから知りたいという方は、先に以下の記事で基本を確認しておくと、本記事の内容もより理解しやすくなります。

本記事では、公認会計士が今回の拠出限度額引き上げについて、「いつから」「いくらに」「なぜ」変わるのか、引き上げによってどんなメリットがあるのか、そして自分は何をすればよいのかを、順番にわかりやすく整理して解説します。

本記事で紹介する施行時期・金額等は、本記事執筆時点で公表されている情報にもとづいてまとめたものです。今後、政令等で詳細が確定していく過程で内容が変更される可能性もあるため、実際に手続きを行う前には、必ずiDeCo公式サイト(国民年金基金連合会が運営)や厚生労働省の公式情報で最新の内容をご確認ください。


Contents
  1. iDeCoの掛金上限、2027年から引き上げへ―まず結論を整理
  2. 【一覧表】新しい掛金上限はいくらになる?区分別に解説
  3. なぜ引き上げられるのか?制度改正の背景
  4. 上限が上がると何が嬉しいのか?メリットを整理
  5. 掛金上限が上がったら、自分は何をすればいい?
  6. iDeCoの拠出限度額引き上げに関するよくある疑問
  7. まとめ:まず自分の新しい上限額を確認しよう

iDeCoの掛金上限、2027年から引き上げへ―まず結論を整理

何が変わるのか(結論を先に整理)

まず、今回の制度改正のポイントを整理します。

  • iDeCoの掛金の上限額(拠出限度額)が、加入者の区分(職業や勤務先の企業年金の加入状況)に応じて引き上げられる
  • 自営業者・フリーランスなど(第1号被保険者)は月額68,000円→75,000円に
  • 会社員・公務員(第2号被保険者)は、企業年金の加入状況によって細かく分かれていた上限額が、企業年金等と合算して月額62,000円という基準に一本化される(企業年金がない会社員は実質、月額23,000円→62,000円へと大幅な引き上げになる)
  • 専業主婦・専業主夫(第3号被保険者)は、月額23,000円のまま変更はない見込み
  • あわせて、iDeCoに加入できる年齢の上限も、65歳未満から70歳未満へと広がる見込み

これらの金額は、本記事執筆時点で公表されている情報にもとづく見込みであり、今後、政令等を通じて正式に確定するものです。それぞれの詳しい金額は、次の章で区分ごとに整理します。

いつから変わるのか(施行時期の表現について)

今回の改正は、2025年6月に成立した「年金制度改正法」に盛り込まれた内容です。厚生労働省は、この拠出限度額の引き上げについて「令和9(2027)年の控除分からの実現を目指して準備を進める」としています。

具体的な適用時期については、複数の金融機関の解説で「2026年12月に制度改正が施行され、2026年12月分の掛金(2027年1月に引き落とされる掛金)から新しい上限額が適用される」という趣旨の説明が共通して見られます。一方で、単に「2027年1月から」とだけ紹介している情報もあります。これらは矛盾しているというよりも、「法律上の施行日」を基準にした表現か、「実際に新しい上限額が反映される掛金の引き落としのタイミング」を基準にした表現かの違いによるものと考えられます。

いずれの表現でも、2026年内は現在の上限額のままで、2027年1月の引き落とし分(2026年12月分の掛金)から新しい上限額に切り替わる、という理解でおおむね差し支えないと考えられますが、細部は今後の政令等で確定していく部分もあります。正確な適用開始日は、必ずiDeCo公式サイトや加入している金融機関の最新のお知らせでご確認ください。


【一覧表】新しい掛金上限はいくらになる?区分別に解説

iDeCoの掛金の上限額は、加入者が国民年金のどの区分に当てはまるかによって異なります。まずは全体像を一覧表で確認しましょう。

区分 現在の上限額(月額) 2027年以降の上限額(月額)
第1号被保険者(自営業者・フリーランス・学生など) 68,000円(国民年金基金の掛金・付加保険料と合算) 75,000円(同上)
第2号被保険者・企業年金なし(会社員) 23,000円 62,000円
第2号被保険者・企業型DCやDBがある(会社員・公務員など) 20,000円(企業年金等の掛金と合算して月55,000円以内) 企業年金等と合算して62,000円(iDeCo単独の上限は撤廃)
第3号被保険者(専業主婦・専業主夫) 23,000円 23,000円(変更なし)

※上記は本記事執筆時点で公表されている情報を整理した目安です。特に企業年金(企業型DC・DB)がある会社員・公務員の方の正確な金額は、勤務先が拠出している掛金の水準によって一人ひとり異なるため、後述のとおり勤務先や金融機関への確認をおすすめします。

自営業者・フリーランス・学生(第1号被保険者):68,000円→75,000円

国民年金の「第1号被保険者」とは、自営業者・フリーランス・学生など、厚生年金に加入していない20歳以上60歳未満の方が該当する区分です。第1号被保険者のiDeCoの掛金上限は、国民年金基金(自営業者等が任意で加入できる、公的年金に上乗せする制度)の掛金や、国民年金の付加保険料(将来の年金額を増やすための上乗せ保険料)と合算して、現在は月額68,000円までとされています。

2027年以降は、この合算の上限が月額75,000円に、7,000円引き上げられる見込みです。

会社員・公務員(第2号被保険者):上限が一本化されて62,000円に

国民年金の「第2号被保険者」とは、厚生年金に加入している会社員・公務員などが該当する区分です。第2号被保険者のiDeCo拠出限度額は、これまで勤務先の企業年金の加入状況によって、次のように細かく分かれていました。

  • 企業年金(企業型DC・DBなど)がない会社員:月額23,000円
  • 企業型DC(企業型確定拠出年金。会社が掛金を出し、従業員が自分で運用する制度)のみに加入している会社員:iDeCo単独では月額20,000円まで、かつ企業型DCの掛金と合わせて月額55,000円以内
  • DB(確定給付企業年金。あらかじめ将来受け取る給付額が決まっている企業年金)がある会社員や公務員など:iDeCo単独では月額20,000円まで、かつ他制度の掛金相当額と合わせて月額55,000円以内

2027年以降は、この複雑な区分が整理され、企業年金の種類にかかわらず「企業年金等の掛金と合算して月額62,000円まで」というシンプルな基準に一本化される見込みです。iDeCo単独での上限(20,000円などの内枠)は撤廃される見込みです。企業年金がない会社員であれば、実質的に月額23,000円から62,000円へと、上限額が約2.7倍になる計算です。

なお、企業型DCやDBがある方の正確な上限額は、勤務先が拠出している掛金の水準によって一人ひとり異なります。ご自身の正確な金額を知りたい場合は、勤務先の人事・総務担当や、iDeCoに加入している金融機関に確認することをおすすめします。

専業主婦・専業主夫(第3号被保険者):23,000円のまま変更なし

国民年金の「第3号被保険者」とは、第2号被保険者(会社員・公務員)に扶養されている配偶者が該当する区分です。第3号被保険者のiDeCo拠出限度額は、現在の月額23,000円から、2027年以降も変更されない見込みです。今回の改正は、主に第1号・第2号被保険者を対象としたものだと理解しておくとよいでしょう。


なぜ引き上げられるのか?制度改正の背景

「年金制度改正法」にiDeCoの拡充が盛り込まれた

今回の拠出限度額の引き上げは、2025年6月に成立した「年金制度改正法」に盛り込まれた内容です。さかのぼると、2024年12月に閣議決定された税制改正大綱の中で、すでに方向性が示されていました。

働き方や生き方が多様化する中で、会社員か自営業者か、勤務先に企業年金があるかないかといった違いによって老後資金を準備できる金額に差が生じている状況をならし、より多くの人が老後資金を計画的に準備しやすくすることが、今回の改正の狙いの一つとされています。

あわせて加入可能年齢も70歳未満に拡大

今回の改正では、拠出限度額の引き上げとあわせて、iDeCoに加入できる年齢の上限も見直される見込みです。現在は原則65歳未満までとされている加入可能年齢が、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をまだ受け取っていないことなどを条件に、70歳未満まで拡大される予定です。

働きながら年金を受け取る「継続雇用」や「再雇用」が一般的になりつつある中で、より長い期間、iDeCoで老後資金を積み立てられるようにする狙いがあると考えられます。


上限が上がると何が嬉しいのか?メリットを整理

掛金は全額所得控除―上限が増えれば節税効果の余地も広がる

iDeCoの掛金は、その全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になります。所得控除とは、所得税・住民税を計算するもとになる金額(所得)から一定額を差し引く仕組みのことで、控除額が大きいほど税金の負担が軽くなります。拠出限度額が引き上げられるということは、この所得控除に使える金額の上限が広がるということでもあります。

例えば、企業年金のない会社員の場合、現在の上限(月額23,000円)まで拠出すると、年間の掛金は276,000円です。2027年以降の新しい上限(月額62,000円)まで拠出すると、年間の掛金は744,000円となり、所得控除の対象になる金額が年間で468,000円増える計算になります。所得税・住民税の合計税率が20%程度の方であれば単純計算で年間9万円程度、30%程度の方であれば年間14万円程度、追加の節税効果が期待できるというイメージです。

ただし、これはあくまで上限まで拠出した場合の単純化した目安であり、実際の節税額は年収や他の控除の状況によって変わります。掛金を上限まで増やすかどうかとは別の話として、まずは「上限が上がるとこれくらいの効果が見込めるのか」というイメージを持っていただければと思います。

老後資金を準備できる金額の選択肢が広がる

上限額が上がることで、これまで「上限に達していて、これ以上iDeCoで積み立てたくても積み立てられなかった」という方にとっては、老後資金を準備できる金額の選択肢が広がることになります。特に企業年金がない会社員は上限額の引き上げ幅が大きいため、影響を受ける方も多いと考えられます。

ただし「上限額」と「拠出すべき金額」は別問題

ここで注意したいのは、「上限額が上がった=上限まで拠出すべき」というわけではないという点です。iDeCoは原則60歳になるまで、積み立てたお金を引き出すことができません。上限額はあくまで「最大でここまで拠出できる」という枠であり、実際にいくら拠出するかは、ご自身の家計の状況に応じて判断する必要があります。この点については、次の章で詳しく解説します。


掛金上限が上がったら、自分は何をすればいい?

今すぐ手続きが必要なわけではない

まず押さえておきたいのは、拠出限度額が引き上げられても、現在拠出している掛金の金額が自動的に増えるわけではないということです。上限額はあくまで「枠」が広がるだけであり、実際に掛金を増やすかどうかは、加入者自身が変更の手続きを行って初めて反映されます。何もしなければ、これまでどおりの掛金額で運用が続きます。

上限まで拠出すべきとは限らない

掛金を上限まで増やすかどうかは、次のような点を踏まえて判断することをおすすめします。

  • 生活費や、数年内に使う予定のある資金を圧迫してまで掛金を増やしていないか
  • 急な出費に備える生活防衛資金(生活費の3〜6ヶ月分程度が目安とされます)を別途確保できているか
  • いつでも引き出せる新NISAなど、他の資産形成の手段とのバランスが取れているか

iDeCoは60歳まで引き出せないという制約がある一方、新NISAはいつでも引き出せる柔軟性があります。上限が上がったからといって無理にiDeCoの掛金を増やすのではなく、新NISAとの役割分担を踏まえたうえで、無理のない金額を検討することが大切です。iDeCoと新NISAの違いや使い分けの考え方については、以下の記事も参考にしてください。

掛金額を変更する際の注意点

iDeCoの掛金額を変更したい場合は、加入している金融機関(運営管理機関)のマイページや書面での手続きが必要です。掛金額の変更は、一般的に1年に1回までとされているため、変更したいタイミングと回数には注意しましょう。掛金は月額5,000円から1,000円単位で設定できる仕組みになっているため、上限まで一気に増やすのではなく、無理のない範囲で少しずつ見直すという考え方でもよいでしょう。


iDeCoの拠出限度額引き上げに関するよくある疑問

2024年12月にもiDeCoの改正があったと聞きましたが、今回の改正と同じですか?

別の改正です。2024年12月の改正では、DB(確定給付企業年金)など他の企業年金がある会社員・公務員について、iDeCo単独の上限額が月額12,000円から20,000円に引き上げられ、あわせて他制度の掛金水準に応じて上限額を計算する方式に見直されました。今回2027年に予定されている改正は、この延長線上で上限額をさらに大きく引き上げ、区分ごとに複雑だった上限の考え方を「企業年金等と合算して62,000円」というシンプルな基準に整理するものです。段階的に改正が続いている、とイメージすると理解しやすいでしょう。

上限額が上がると、口座管理の手数料も上がりますか?

いいえ、上限額の引き上げと口座管理の手数料は別の話です。手数料は加入している金融機関ごとに定められており、拠出限度額の改正によって自動的に変わるものではありません。ただし、掛金額そのものを増やせば、家計から出ていくお金は増えることになるため、手数料とは別に、掛金の増額が生活に与える影響は事前に確認しておきましょう。

まだiDeCoを始めていませんが、この機会に始めるべきですか?

上限額が上がったこと自体は、iDeCoを始めるかどうかを検討するきっかけの一つにはなりますが、それだけで結論が決まるものではありません。iDeCoは原則60歳まで引き出せない制度のため、始めるかどうかは、生活防衛資金の状況や、当面使う予定のない資金がどれだけあるかを踏まえて判断することが大切です。iDeCoの基本的な仕組みや始め方については、本記事冒頭で紹介した記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

自分が「企業年金あり/なし」のどちらに当てはまるか分かりません

会社員の方がご自身の企業年金の加入状況を確認する最も確実な方法は、勤務先の人事・総務担当部署に問い合わせることです。入社時の説明資料や、iDeCoに加入している金融機関のマイページ上の設定内容から確認できる場合もあります。自己判断で「勤務先に企業年金はない」と思い込んでしまうと、誤った上限額で掛金を設定してしまう可能性があるため、不明な場合は必ず確認することをおすすめします。


まとめ:まず自分の新しい上限額を確認しよう

iDeCoの拠出限度額は、2027年から加入区分に応じて引き上げられる見込みです。最後に、本記事のポイントを整理します。

  • 自営業者・フリーランスなど(第1号被保険者)は月額68,000円→75,000円、会社員・公務員(第2号被保険者)は企業年金の状況にかかわらず合算で月額62,000円に一本化、専業主婦・専業主夫(第3号被保険者)は月額23,000円のまま変更なしの見込み
  • 施行時期は「2026年12月分の掛金(2027年1月引き落とし分)から」という説明が複数の情報源で共通して見られるが、細部は今後の政令等で確定していく部分もあるため、最新情報は公式サイトで要確認
  • 上限が上がれば所得控除に使える金額の余地も広がり、節税効果が増える可能性があるが、実際に拠出する金額は生活防衛資金や新NISAとのバランスを踏まえて判断すべき
  • 拠出限度額が上がっても、掛金は自動的には増えない。増やしたい場合は自分で変更手続きが必要で、変更回数にも制限がある

制度改正のニュースは、自分に関係がある変更なのかどうかが分かりにくいことも多いですが、今回の拠出限度額引き上げは、多くのiDeCo加入者にとって「使える枠が広がる」プラスの改正だと言えます。まずはご自身がどの区分に当てはまり、新しい上限額がいくらになるのかを確認したうえで、無理のない範囲での活用を検討してみてください。

繰り返しになりますが、本記事で紹介した施行時期・金額等は、本記事執筆時点で公表されている情報をもとにした一般的な解説です。制度の詳細・最新の適用時期・金額は、必ずiDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)や厚生労働省の公式情報、加入している金融機関の最新のお知らせでご確認ください。

※本記事は一般的な情報を解説するものです。投資・老後資金の準備は自己判断・自己責任で行い、最新の制度内容は金融庁やiDeCo公式サイト、各金融機関の公式情報をご確認ください。

【筆者プロフィール】現役監査法人勤務の公認会計士。CPAラボ(cpalabo.com)にて会計・簿記・キャリア・お金に関する情報を発信中。