「事業用に車を買ったけど、勘定科目は何にすればいいの?」「中古車と新車で耐用年数が違うって聞いたけど、どう計算するの?」「プライベートでも使う車は、どこまで経費にしていいの?」

個人事業主・フリーランスが営業や配送、取引先への訪問などのために車を購入する場面は少なくありません。ただし車は数十万円〜数百万円する高額な買い物になることがほとんどで、パソコンや備品のように購入した年に全額を経費にできるケースは限られます。さらに、耐用年数の計算、事業とプライベートの按分、購入時にかかる税金・保険料の処理、ローンで購入した場合、下取り・売却した場合など、車ならではの論点も多くあります。

この記事では公認会計士が、個人事業主が事業用の車を購入した場合の勘定科目・仕訳の基本から、車に特有の会計処理のポイントまでをわかりやすく解説します。


車を購入したときの勘定科目は「車両運搬具」

事業用の車を購入した場合に使う勘定科目(かんじょうかもく、取引の内容を分類するための名前)は「車両運搬具(しゃりょううんぱんぐ)」です。乗用車だけでなく、トラックやバイクなど、事業で使う移動手段全般をこの科目でまとめて処理します。

(例)事業用の新車300万円を現金で購入した場合
(借方)車両運搬具 3,000,000円 /(貸方)現金 3,000,000円

車は数十万円以上の買い物になることがほとんどのため、原則として購入した年に代金を全額経費にすることはできません。固定資産(こていしさん、長期間にわたって事業で使用する資産)として資産計上し、使用できると見込まれる期間(耐用年数)にわたって少しずつ経費にしていく「減価償却(げんかしょうきゃく)」という手続きが必要になります。

以前の記事では、パソコンや備品を購入した場合、取得価額(しゅとくかがく、購入代金)に応じて「少額減価償却資産」「一括償却資産」「少額減価償却資産の特例」「通常の減価償却」の4パターンに分かれることを解説しました。車もこの分類の考え方自体は共通していますが、新車であれば数十万円〜数百万円することがほとんどのため、多くの場合は上限区分である「40万円以上・通常の減価償却」に該当します。金額が低く収まる中古車などで特例の対象になるケースもゼロではありませんが、パソコンや備品と比べると特例を使える場面は少ない点を押さえておきましょう。金額区分ごとの詳しい処理方法は、以下の記事で解説しています。


車の耐用年数は新車と中古車で異なる

減価償却を行う際に欠かせないのが、耐用年数(たいようねんすう、資産を使用できると見込まれる期間)です。新車を購入した場合の法定耐用年数は、車種によって次のように定められています。

車種 法定耐用年数
普通自動車(普通乗用車) 6年
軽自動車(総排気量0.66リットル以下) 4年
貨物自動車(ダンプ式を除く) 5年
貨物自動車(ダンプ式) 4年

中古車は「簡便法」で耐用年数を計算できる

中古で車を購入した場合は、新車の法定耐用年数をそのまま使うのではなく、「簡便法(かんべんほう)」という方法で、残りの使用可能期間を見積もることができます。中古資産はすでに一定期間使用されている分、新品よりも使用できる期間が短いと考えられるためです。

簡便法の計算式は、経過年数(新車登録からすでに経過した期間)によって次の2パターンに分かれます。

  • 経過年数が法定耐用年数以上の場合:耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%
  • 経過年数が法定耐用年数に満たない場合:耐用年数 = (法定耐用年数 – 経過年数) + 経過年数 × 20%

計算結果に1年未満の端数が出た場合は切り捨て、それでも2年に満たない場合は2年とみなします。

(例)法定耐用年数6年の普通乗用車を、新車登録から2年経過した状態で中古取得した場合
(6年-2年)+2年×20%=4年+0.4年=4.4年 → 端数切り捨てで4年

なお、中古車を取得した後に大規模な修理・改良(資本的支出)を行い、その金額が「再取得価額(同じ車を新車で取得する場合の価額)」の50%を超える場合は、簡便法を使うことができず、新車と同じ法定耐用年数を使うことになります。通常の点検・整備の範囲であれば心配は不要です。

また、個人事業主の減価償却方法は、税務署に届出をしていなければ「定額法(毎年ほぼ同じ金額を経費にする方法)」が原則です。耐用年数が短くなるほど1年あたりの減価償却費は大きくなりますが、届出をして「定率法」を選択していない限り、購入した年に一気に大部分を経費にできるわけではない点には注意しましょう。


事業用とプライベート兼用の場合は「家事按分」が必要

個人事業主の場合、購入した車を事業だけでなく、買い物や送迎などプライベートでも使うことは珍しくありません。このように事業用とプライベート用の両方に使っている支出について、事業で使った割合分だけを経費にする考え方を「家事按分(かじあんぶん)」といいます。

按分割合の決め方に厳密なルールはありませんが、走行距離の記録や使用日数など、合理的で説明できる基準を使うのが基本です。たとえば1ヶ月の総走行距離のうち事業で使った距離の割合を算出し、その割合を減価償却費やガソリン代、自動車税など車に関連する支出全体に一律で適用する、という方法がよく使われます。

(例)車両運搬具の年間減価償却費が60万円、事業使用割合が70%の場合
(借方)減価償却費 420,000円 /(貸方)減価償却累計額 420,000円

一度決めた按分割合や算定根拠は、走行記録などの形で残しておくと、税務調査の際にも説明しやすくなります。


購入時にかかる自動車税・自賠責保険料などの付随費用の処理

車を購入する際は、車両本体の価格以外にもさまざまな付随費用がかかります。これらをどう処理するかは、新車か中古車かによっても少し扱いが異なります。

取得価額に含めなくてよい費用

新車を購入する場合、次のような税金・保険料・法定費用は、車両の取得価額に含めず、支払った年の経費として処理することが認められています(いったん決めた処理は継続して適用することが前提です)。

  • 自動車税(種別割)・軽自動車税、自動車重量税
  • 自賠責保険料
  • 検査登録費用・車庫証明費用などの法定費用

一方、車両本体価格や納車費用など、車そのものの価値を構成する費用は取得価額に含めて減価償却の対象とします。

(例)自動車税20,000円・自動車重量税30,000円を現金で支払った場合
(借方)租税公課 50,000円 /(貸方)現金 50,000円
(例)自賠責保険料40,000円を現金で支払った場合
(借方)損害保険料 40,000円 /(貸方)現金 40,000円

中古車購入時は「自動車税精算金」に注意

中古車を購入する場合、その年度分の自動車税をすでに前の所有者が納付済みであることが多く、名義変更後の残り期間分を「精算金」として売主に支払うケースがあります。この精算金は税金そのものの立替払いではなく、法的には売買代金の一部とみなされるため、車両の取得価額に含めて処理するのが一般的です。新車購入時の自動車税とは扱いが異なる点に注意しましょう。

消費税の課税区分にも注意

会計ソフトへ入力する際は、消費税の課税区分にも注意が必要です。車両本体価格や登録手続きの代行手数料は「課税仕入れ」に該当しますが、自動車税・自動車重量税は税金そのものであるため「不課税」、自賠責保険料や検査登録・車庫証明の法定手数料部分は「非課税」に区分されます。請求書の内訳を確認しながら入力しましょう。


ローンで購入した場合の処理(利息と元本の違い)

車をローン(自動車ローンやディーラーの割賦)で購入した場合も、車両運搬具の全額をいったん資産計上する点は現金購入と変わりません。購入時に支払った頭金は現金・預金の減少として、残りのローン分は「未払金」(契約内容によっては「借入金」)という負債の科目で処理します。

(例)300万円の車を購入し、頭金50万円を現金で支払い、残り250万円をローンにした場合

(借方)車両運搬具 3,000,000円
(貸方)現金     500,000円
(貸方)未払金   2,500,000円

その後の毎月の返済では、返済額のうち元本部分と利息部分を分けて処理します。経費にできるのは利息部分だけで、元本部分は負債(未払金)を減らす処理にすぎません。

(例)ローン返済で、元本相当額30,000円と利息相当額5,000円をあわせて口座から引き落とされた場合

(借方)未払金   30,000円
(借方)支払利息  5,000円
(貸方)普通預金  35,000円

車両運搬具そのものは購入時にすでに全額を資産計上しているため、ローンを返済するたびに車両運搬具の金額が変わるわけではありません。この点を混同しないようにしましょう。


下取り・売却したときの処理(固定資産売却損益)

車を買い替える際や事業をやめる際に、それまで使っていた車を下取りに出したり売却したりすることがあります。この場合、帳簿上の「帳簿価額(取得価額から減価償却累計額を差し引いた金額)」と、実際に売却・下取りされた金額との差額を損益として処理します。この差額を「固定資産売却損益(こていしさんばいきゃくそんえき)」と呼び、売却額の方が帳簿価額より高ければ「固定資産売却益」、低ければ「固定資産売却損」となります。

(例)帳簿価額80万円の車を100万円で売却し、代金が普通預金に振り込まれた場合

(借方)普通預金   1,000,000円
(貸方)車両運搬具   800,000円
(貸方)固定資産売却益 200,000円

法人であれば、この売却損益はそのまま決算書の損益に反映されます。しかし個人事業主の場合は扱いが少し異なります。個人が事業用に使っていた車を売却した場合の損益は、事業所得ではなく「譲渡所得(じょうとしょとく、資産を売ったことで生じる所得の区分)」として扱われるため、青色申告決算書上の事業所得の計算には含めません。実務上は、車両運搬具を帳簿価額で帳簿から除き、差額は事業主個人とのお金のやり取りを表す「事業主借」「事業主貸」といった科目で調整する処理が一般的です。また、通勤や生活のために通常必要とされる自動車の売却による所得は非課税とされるケースもありますが、事業用としての使用実態や金額によって判断が変わるため、迷う場合は事前に税理士に相談することをおすすめします。


車以外の資産・経費の勘定科目に迷ったら

ここまで車を購入した場合の処理を解説してきましたが、個人事業主が勘定科目に迷う支出は車に限りません。会計ソフトの利用料が経費になるかどうか、勘定科目は何にすればよいか迷っている方は、以下の記事もあわせてご確認ください。

また、車のような有形の資産だけでなく、自社システムの開発費用のように「資産計上すべきか、その場で費用処理すべきか」の判断に迷う支出もあります。考え方の枠組みは以下の記事で解説しています。


まとめ

車を購入した場合の会計処理について、ポイントを整理します。

  • 車を購入した場合の勘定科目は「車両運搬具」で、原則として耐用年数に応じた減価償却が必要
  • 法定耐用年数は普通乗用車6年、軽自動車4年など車種によって異なる
  • 中古車は「簡便法」で耐用年数を短く見積もれる((法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%、最低2年)
  • 事業とプライベート兼用の場合は「家事按分」で事業使用割合分だけを経費にする
  • 自動車税・自賠責保険料などは車両の取得価額に含めず経費処理できる(中古車の税精算金は例外)
  • ローン購入では元本部分は資産・負債の増減にすぎず、利息部分だけが経費(支払利息)になる
  • 売却・下取り時の損益は、法人なら固定資産売却損益、個人事業主なら譲渡所得として扱いが異なる

車の購入・保有・売却は金額が大きく、処理を誤ると税務調査で指摘を受けやすいポイントでもあります。購入前に大まかな処理の流れを押さえておき、実際の申告では顧問税理士にも確認しながら進めましょう。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。耐用年数の判定や家事按分の割合、売却時の税務上の取り扱いなど、個別の状況によって判断が異なる場合がありますので、具体的な処理方法は顧問税理士や税務署にご確認ください。

【筆者プロフィール】現役監査法人勤務の公認会計士。CPAラボ(cpalabo.com)にて会計・簿記・キャリア・お金に関する情報を発信中。