「年末調整の書類が配られたけど、何をどう書けばいいのかわからない」「今年から結婚して家族が増えたけど、扶養控除の欄はどう書くの?」「住宅ローンを組んだばかりだけど、年末調整で控除を受けられるの?」――秋から冬にかけて、多くの会社員が一度は抱く疑問です。

年末調整(ねんまつちょうせい)とは、毎月の給料から天引きされている所得税(源泉徴収税額)と、1年間の本来の税額との差額を、年末に会社が精算してくれる手続きのことです。生命保険への加入、家族の扶養、住宅ローンの契約といった個々の事情は毎月の給与計算には反映されていないため、年末にまとめて申告書を提出することで、払いすぎた税金が戻ってきたり(還付)、逆に不足分が追加で徴収されたりします。

この記事では、公認会計士の視点から、会社員が年末調整で提出する主な書類の書き方を、記入例のイメージとともに解説します。令和8年度税制改正によって基礎控除や扶養控除の年収要件が例年以上に大きく変わっているため、初めて年末調整をする新社会人の方はもちろん、毎年書いてはいるけれど自信がないという方にも役立つ内容です。

※本記事は令和8年分(2026年分)の年末調整を前提に解説しています。制度の詳細は年によって変わることがあるため、正確な内容は国税庁の公式サイトやお勤め先の年末調整担当窓口でご確認ください。


そもそも年末調整とは?確定申告との違い

年末調整は、会社が従業員に代わって所得税の過不足を精算してくれる制度です。毎月の給与から天引きされる源泉徴収税額はあくまで概算であり、実際の税額は、その年の年収が確定し、生命保険料控除や扶養控除など個人の事情に応じた控除をすべて反映して初めて計算できます。この「概算と実額の差」を清算する手続きが年末調整です。

似た言葉に「確定申告」がありますが、こちらは個人が自分で税務署に所得と税額を申告する手続きです。会社員の場合、通常は年末調整だけで所得税の手続きが完結し、確定申告は不要です。ただし、次のようなケースでは年末調整だけでは完結せず、確定申告が別途必要になります。

  • 年収が2,000万円を超える人(そもそも年末調整の対象外です)
  • 副業などの所得(年末調整されない給与・雑所得等)の合計が年20万円を超える人
  • 住宅ローン控除を初めて受ける人(1年目は確定申告が必要。詳しくは後述します)
  • 医療費控除や、ふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)など、年末調整では対応できない控除を受けたい人

副業がある会社員の確定申告の要否については、以下の記事でも詳しく解説しています。

令和8年分の年末調整はいつ行われる?

年末調整は、その年最後の給与を支払うタイミング(多くは12月給与)に合わせて、例年11月〜12月にかけて行われます。従業員が会社に申告書を提出する期限は会社ごとに異なりますが、11月中(11月10日前後〜11月末頃)に設定している企業が多いようです。年末が近づいてから慌てないよう、生命保険料控除証明書などの必要書類は早めに準備しておきましょう。


年末調整で提出する主な書類一覧

会社員が年末調整で提出する書類は、主に次の4つです。会社によって呼び方や配布方法(紙・Web申告システム)は異なりますが、記載する内容の骨組みは共通しています。

書類名 どんな人が提出するか 主な記載内容
① 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 年末調整を受ける人はほぼ全員 本人・扶養家族の情報、障害者・ひとり親控除など
② 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 兼 特定親族特別控除申告書 年末調整を受ける人はほぼ全員 基礎控除、配偶者控除等、大学生年代の子の控除など
③ 給与所得者の保険料控除申告書 生命保険・地震保険・iDeCo等がある人 生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除
④ (特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 住宅ローン控除2年目以降の人 住宅ローン控除額の計算

②の書類名がとても長いのは、令和7年度税制改正で新設された「特定親族特別控除」(大学生年代の子どもがいる場合の控除)の申告欄が、基礎控除・配偶者控除等の申告書に統合されているためです。1枚の書類で4種類の控除をまとめて申告する形になっています。

それでは、それぞれの書類の書き方を具体的に見ていきましょう。


①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方

この書類は、扶養している家族がいるかどうかを会社に伝えるための申告書です。年末調整だけでなく毎月の源泉徴収税額を計算する基礎にもなっているため、多くの会社では入社時や年始にも提出しており、年末調整のタイミングでは「内容に変更がないかの確認・訂正」と「翌年分の提出」をあわせて行うのが一般的です。

主な記入欄

記入する内容
あなたの氏名・住所・生年月日 本人の基本情報
世帯主の氏名・あなたとの続柄 住民票上の世帯主が誰か(本人が世帯主なら「本人」)
控除対象扶養親族 扶養している家族の氏名・個人番号(マイナンバー)・続柄・生年月日・本年中の合計所得金額の見積額
障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生等 該当する場合にチェック
住民税に関する事項 16歳未満の扶養親族の情報

たとえば、配偶者と0歳の子どもを扶養している会社員の場合、子どもの氏名・続柄は「控除対象扶養親族」欄ではなく、下部の「住民税に関する事項」欄に記載します。所得税の控除対象扶養親族欄に記載するのは、原則として年末時点で16歳以上の扶養親族に限られるためです。16歳未満の子どもは所得税の扶養控除の対象にはなりませんが、住民税の非課税判定などに影響するため、記載自体は必要になります。

令和8年分は扶養親族の年収要件が136万円に

控除対象扶養親族の欄で特に注意したいのが「本年中の合計所得金額の見積額」です。この金額が一定額を超えると、扶養控除の対象から外れてしまいます。令和7年分(2025年分)の年末調整では、この年収要件は給与収入ベースで123万円でしたが、令和8年度税制改正によって、令和8年分(2026年分)はさらに136万円に引き上げられています。

扶養控除の年収要件は、基礎控除・給与所得控除の見直しに連動して近年頻繁に変わっているため、「昨年は扶養に入れられたのに今年は対象外になった(またはその逆)」ということが起こり得ます。控除の仕組みと、これまでの改正の経緯については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

マイナンバーの記載は省略できる場合がある

扶養控除等申告書には、本人と扶養親族のマイナンバー(個人番号)を記載する欄がありますが、勤務先が適切な方法でマイナンバーを管理・保管している場合は、記載を省略できることがあります。省略できるかどうかは会社の運用によって異なるため、指示に従って記入してください。


②基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 兼 特定親族特別控除申告書の書き方

この書類は、4つの控除をまとめて申告するための書類です。1つずつ見ていきましょう。

基礎控除の書き方

基礎控除(きそこうじょ、所得の金額にかかわらずすべての納税者が受けられる控除)は、以前は一律48万円でしたが、近年の税制改正で毎年のように見直されています。令和7年分は合計所得金額132万円以下の場合に95万円でしたが、令和8年度税制改正により、令和8年分は次のように変わりました。

合計所得金額 基礎控除の額(令和8年分)
489万円以下 104万円
489万円超655万円以下 67万円
655万円超2,350万円以下 62万円

給与収入だけの一般的な会社員の多くは、この104万円の区分(合計所得489万円以下)に該当します。会社員で給与収入のみの場合、基礎控除104万円+給与所得控除の最低保障額74万円=178万円まで所得税がかからない計算になります。これがいわゆる「178万円の壁」です。基礎控除申告書には、給与収入の見積額から所得金額を計算するための表があらかじめ印刷されているので、その表に当てはめて記入すれば大丈夫です。

なお、104万円のうち上乗せ分(42万円)は令和8年分・令和9年分限定の時限措置で、月々の給与計算(源泉徴収)にはまだ反映されておらず、年末調整でまとめて精算される仕組みになっています。毎月の給与明細だけを見て「今年はあまり変わっていない」と感じても、年末調整の結果には大きく反映されることがあるので覚えておきましょう。

配偶者控除等申告書の書き方(配偶者がいる場合)

配偶者(はいぐうしゃ)がいる方は、配偶者控除等申告書の欄に、配偶者の氏名・生年月日・個人番号・本年中の合計所得金額の見積額を記入します。本人の所得区分(基礎控除の判定と同じ区分)と配偶者の所得区分を組み合わせた表から、配偶者控除または配偶者特別控除の金額を判定する仕組みです。

所得金額調整控除(該当者のみ)

所得金額調整控除は、給与収入が850万円を超え、かつ「23歳未満の扶養親族がいる」「本人・同一生計配偶者・扶養親族のいずれかが特別障害者に該当する」といった要件を満たす場合に、給与所得の金額から一定額(最大15万円)を差し引ける制度です。多くの会社員には関係しませんが、該当する場合はチェック欄への記入を忘れないようにしましょう。

特定親族特別控除(大学生年代の子がいる場合)

19歳以上23歳未満の子ども(大学生年代であることが多い年齢層)を扶養している場合は、特定親族特別控除申告書の欄に、その子の氏名・生年月日・個人番号・本年中の合計所得金額の見積額を記入します。この控除は令和7年度税制改正で新設された比較的新しい制度で、子どものアルバイト収入が扶養控除の年収要件(136万円)を超えても、一定の年収までは段階的に控除を受けられる仕組みです。

配偶者控除・配偶者特別控除の年収ラインも、特定親族特別控除の年収ラインも、令和8年度税制改正でさらに引き上げられています。ただし、控除額が段階的に変わる細かい年収の区切りは基礎控除以上に複雑なため、正確な金額は申告書に印刷されている早見表で確認しながら記入し、制度創設の背景や考え方を詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご確認ください。


③給与所得者の保険料控除申告書の書き方

この書類では、生命保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金(iDeCoなど)の控除を申告します。共通して言えるのは、保険会社や国民年金基金連合会などから送られてくる「控除証明書」の金額を、そのまま転記すれば基本的に完成するということです。証明書は毎年10月頃から順次届き始めるので、なくさないよう保管しておきましょう。

生命保険料控除の書き方

生命保険料控除(せいめいほけんりょうこうじょ)は、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3区分ごとに、支払った保険料に応じて控除額が計算される仕組みです。平成24年(2012年)以降に契約した保険は「新制度」、それ以前の契約は「旧制度」に区分され、証明書にもどちらの制度かが記載されています。

区分 所得税の控除上限額(新制度)
一般の生命保険料 4万円
介護医療保険料 4万円
個人年金保険料 4万円
3区分合計の上限 12万円

証明書に記載されている「保険会社等の名称」「保険等の種類」「新・旧の区分」「本年中に支払った保険料等の金額」を、そのまま申告書の該当欄に書き写し、申告書に印刷されている計算式に当てはめれば控除額が算出できます。

令和8年分・令和9年分は特例として、23歳未満の扶養親族がいる場合、新制度の一般の生命保険料控除の上限が所得税4万円から6万円に引き上げられています(3区分合計の上限12万円は変わりません)。この特例は自動的には適用されず、保険料控除申告書への記載が条件になるため、該当する方は記入漏れに注意しましょう。

地震保険料控除の書き方

地震保険料控除(じしんほけんりょうこうじょ)は、地震保険料や一定の要件を満たす旧長期損害保険料を支払った場合に受けられる控除で、控除の上限額は所得税5万円、住民税2万5,000円です。証明書に記載された保険会社名・保険期間・支払保険料の金額を、申告書の地震保険料控除欄に転記します。

社会保険料控除の書き方

会社の給与から天引きされている厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料は、すでに会社側で年末調整に反映されているため、原則として自分で記入する必要はありません。この欄への記入が必要になるのは、家族の国民年金保険料を代わりに支払った場合など、給与天引き以外の方法で社会保険料を支払ったケースです。

小規模企業共済等掛金控除(iDeCoの書き方)

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)に加入している方は、この欄に掛金の金額を記入します。iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になり、支払った掛金の全額を所得から差し引くことができます。

国民年金基金連合会から10月下旬以降に送られてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載されている、その年の掛金の合計額を、保険料控除申告書の「小規模企業共済等掛金控除」欄に転記し、証明書を添付して提出すれば手続きは完了です。iDeCoの制度の仕組みや始め方については、以下の記事で詳しく解説しています。


④住宅ローン控除の申告(2年目以降の人向け)

住宅ローンを組んでマイホームを購入した方が受けられる「住宅ローン控除(正式には住宅借入金等特別控除)」は、年末調整で申告できるかどうかが年によって異なる、少し特殊な控除です。

1年目は必ず確定申告が必要

住宅ローン控除を初めて受ける年(住み始めた年の翌年)は、会社員であっても年末調整では手続きができず、必ず自分で確定申告をする必要があります。年末調整だけで完結すると誤解しないよう注意しましょう。

2年目以降は年末調整で対応できる

2年目以降は、会社員であれば年末調整で住宅ローン控除の手続きができます。必要な書類は次の2つです。

  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書:1年目に確定申告をすると、適用年数分がまとめて税務署から送付されます
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書:借入先の金融機関から毎年10月頃に送られてきます

この2つの書類を年末調整の際に会社へ提出すれば、給与から天引きされていた所得税の一部が還付される形で控除が反映されます。証明書に記載された年末残高を、税務署から送られた申告書の該当欄に転記するだけで、控除額の計算自体は申告書内の計算式に沿って行える作りになっています。届いた書類を紛失すると再発行の手続きに時間がかかるため、大切に保管しておきましょう。


年末調整でよくある疑問・注意点

提出を忘れたらどうなる?

年末調整の書類提出を忘れたり、期限に間に合わなかったりすると、その年の年末調整では控除が反映されず、税金を多く払いすぎた状態のままになることがあります。この場合でも、翌年以降に自分で確定申告(還付申告)をすれば、払いすぎた税金を取り戻せることが多いので、慌てず勤務先の担当窓口に相談しましょう。

年の途中で結婚・出産・扶養家族が増減した場合

結婚や出産、家族の就職・独立などで扶養家族の状況が変わった場合は、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄にその内容を記載し、必ず会社に申告してください。申告を忘れると、本来受けられるはずの控除が漏れてしまう可能性があります。

年収2,000万円を超える人は年末調整の対象外

給与収入が2,000万円を超える方は、そもそも年末調整の対象外となり、自分で確定申告をする必要があります。該当する方は勤務先から年末調整の書類自体を求められない場合もありますが、確定申告が必要な点は変わらないので注意しましょう。


年末調整のスケジュール(目安)

最後に、令和8年分の年末調整の一般的なスケジュールを整理します。

時期 内容
10月頃 生命保険料控除証明書・住宅ローンの年末残高証明書などが順次届く
11月頃 会社から申告書が配布され、記入・提出(締切は会社により異なる)
12月 年末調整の計算が行われる
12月または翌年1月の給与 還付・追加徴収が反映される
翌年1月31日まで 会社が源泉徴収票などを税務署・市区町村へ提出

まとめ

年末調整は、複数の書類を書く手間はあるものの、1つずつ見れば「証明書の金額を転記する」「該当する家族の情報を記入する」という比較的シンプルな作業の積み重ねです。特に令和8年分は、基礎控除・扶養控除の年収要件が令和7年分からさらに引き上げられているため、昨年までの記入内容をそのまま踏襲せず、最新の金額を確認しながら記入することが大切です。

わからない箇所があれば、自己判断せずに勤務先の年末調整担当窓口に確認するのが一番確実です。この記事が、初めて年末調整をする方や、家族構成・住宅ローン・保険の内容が変わった方の書類作成の助けになれば幸いです。


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。控除の適用可否・記入方法の詳細はお勤め先の年末調整担当窓口や国税庁の公式サイトでご確認ください。

【筆者プロフィール】現役監査法人勤務の公認会計士。CPAラボ(cpalabo.com)にて会計・簿記・キャリア・お金に関する情報を発信中。