住民税とは?仕組みと会社員・個人事業主で異なる納め方を公認会計士が解説
会社員の方であれば、毎月の給与明細に「住民税」という項目があり、いつの間にか天引きされていることはご存知でも、「そもそも住民税って何にいくらかかっているの?」と聞かれると、答えに詰まる方も多いのではないでしょうか。一方、個人事業主として独立すると、ある日突然、市区町村から住民税の納付書が送られてきて、「思ったより金額が大きい」「いつ払えばいいのかわからない」と戸惑うケースも少なくありません。
住民税(じゅうみんぜい)は、私たちが暮らす都道府県・市区町村の行政サービスの財源となる、身近でありながら意外と仕組みが知られていない税金です。会社員と個人事業主とでは納め方が大きく異なるため、「特別徴収」「普通徴収」といった聞き慣れない言葉に戸惑う方もいるでしょう。
この記事では、公認会計士の視点から、住民税の基本的な仕組み(前年課税、所得割・均等割)と、会社員・個人事業主それぞれの具体的な納め方の違いを、初めての方にもわかりやすく整理して解説します。
※本記事は令和8年度(2026年度)の住民税を前提に解説しています。税制は毎年見直しが行われるため、正確な内容は総務省やお住まいの市区町村の公式情報でご確認ください。
住民税とは?「都道府県民税」と「市区町村民税」の合計
住民税とは、正式な1つの税金の名前ではなく、都道府県民税と市区町村民税を合わせた通称です。会社員の給与明細や、個人事業主に届く納付書には「住民税」ではなく「市民税・県民税」「特別区民税・都民税」といった表記がされていることもありますが、指しているものは同じです。
所得税が国に納める国税であるのに対し、住民税は都道府県・市区町村に納める地方税です。ゴミ収集、学校教育、道路整備、福祉サービスなど、私たちが日常的に受けている行政サービスの財源の一部として使われています。「その地域に住んでいる人が、応分の負担をして地域社会を支える」という会費的な性格を持つ税金だと理解しておくと、この後説明する仕組みも納得しやすくなります。
住民税は「所得割」と「均等割」の2本立て
住民税は、性質の異なる2つの部分を合計して計算します。
所得割:前年の所得に応じてかかる部分
所得割(しょとくわり)は、前年の所得金額に応じて税額が変わる部分です。所得税が所得に応じて税率が5%〜45%まで段階的に上がる累進課税であるのに対し、住民税の所得割は所得の多い少ないにかかわらず、標準税率10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%)のほぼ一律です。なお、横浜市・大阪市などの政令指定都市にお住まいの場合は、道府県民税2%・市民税8%とやや内訳が異なりますが、合計10%であることは変わりません。
均等割:所得にかかわらず定額でかかる部分
均等割(きんとうわり)は、所得の金額にかかわらず定額でかかる部分です。標準額は都道府県民税1,000円+市区町村民税3,000円の合計4,000円ですが、2024年度からは、森林整備等の財源となる国税「森林環境税」1,000円が個人住民税の均等割とあわせて徴収される仕組みになったため、実質的な負担額は年5,000円です。2023年度までは、東日本大震災の復興財源を確保するための特例措置として均等割そのものが道府県・市町村それぞれ500円ずつ上乗せされており、当時も合計5,000円だったため、私たちが実際に負担する金額としては大きく変わっていません。
所得割と均等割の違いを整理すると、次のとおりです。
| 性質 | 所得割 | 均等割 |
|---|---|---|
| かかり方 | 前年の所得金額に応じて変動 | 所得にかかわらず定額 |
| 標準的な金額 | 10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%) | 年5,000円(都道府県民税1,000円+市区町村民税3,000円+森林環境税1,000円) |
| 非課税になる基準 | 所得に応じた基準を上回ると課税 | 所得割より低い所得水準から課税される |
住民税は「前年課税」―今払っている税額は「去年の所得」で決まる
住民税を理解するうえで最も重要な仕組みが、前年課税(ぜんねんかぜい)です。住民税は、その年の1月1日時点で住んでいる市区町村が、前年1月〜12月の所得をもとに税額を計算し、その年度(6月〜翌年5月)にわたって課税する仕組みになっています。
所得税がその年の所得に対してその年のうちに(会社員なら年末調整、個人事業主なら翌年の確定申告で)精算されるのに対し、住民税は所得が発生してから実際に課税されるまで、1年ほどのタイムラグがある点が大きな違いです。
前年課税を実感しやすい具体例
新卒で入社した1年目の会社員の給与明細を見ると、住民税がほとんど天引きされていないことに気づいた方もいるのではないでしょうか。これは、入社1年目は前年(学生時代)の所得がほとんどなく、課税対象となる所得が少ないためです。多くの場合、2年目の6月分の給与から本格的に住民税の天引きが始まります。
また、今課税されている住民税は、前年中の所得をもとに計算されたものです。年の途中で収入が大きく増減しても住民税額にはすぐには反映されず、翌年度になって初めて反映されます。会社員の場合、毎年5〜6月頃に勤務先を通じて「住民税決定通知書」が届き、6月分の給与から新しい年度の住民税額に切り替わるため、このタイミングで前年の所得の影響を実感する方も多いでしょう。
なお、会社員の場合、年末調整で確定した1年間の所得の情報が、翌年度の住民税額を計算する基礎にもなります。年末調整の具体的な書き方については、以下の記事で詳しく解説しています。
会社員の住民税の納め方「特別徴収」
会社員(給与所得者)の住民税は、原則として特別徴収(とくべつちょうしゅう)という方法で納められます。
特別徴収とは、勤務先が毎月の給与から住民税を天引きし、従業員に代わって市区町村へ納付する仕組みです。所得税の源泉徴収と似ていますが、住民税は前年の所得をもとに年額があらかじめ確定しているため、その年額を12回(6月〜翌年5月)に分けて、毎月ほぼ均等な金額が天引きされます。
特別徴収は、一部の例外(従業員数が少ない事業所など)を除いて勤務先の義務であり、従業員が「給与天引きではなく自分で払いたい」と希望しても、原則として選ぶことはできません。
副業がある会社員は要注意
副業や複数の勤務先から収入がある場合、それらの所得も合算されたうえで住民税額が計算され、本業の勤務先に通知されます。そのため、給与水準に対して住民税額が高いと、経理担当者が違和感を持つきっかけになることがあります。副業の確定申告・住民税の注意点については、以下の記事でも詳しく解説しています。
個人事業主の住民税の納め方「普通徴収」
個人事業主やフリーランスなど、給与所得者以外の方の住民税は、普通徴収(ふつうちょうしゅう)という方法で納めます。
普通徴収とは、市区町村から送られてくる納付書(または口座振替)を使って、自分自身で住民税を納付する方法です。個人事業主が確定申告をすると、その所得の情報は税務署から市区町村へ自動的に連携されます。市区町村はその情報をもとに住民税額を計算し、例年5〜6月頃に「税額決定通知書」と納付書を送付します。
普通徴収の納付は、原則として年4回に分けて行います。
| 納付回(期) | 納期限の目安 |
|---|---|
| 第1期 | 6月末 |
| 第2期 | 8月末 |
| 第3期 | 10月末 |
| 第4期 | 翌年1月末 |
4回に分けず、第1期の納期限までに年税額を一括で納付することも可能です。なお、個人事業主には別途「予定納税」という所得税の前払い制度(前年の所得税額が一定額以上の場合に対象)もありますが、これは国税である所得税の制度であり、地方税である住民税の普通徴収とは別の手続きです。納期限(予定納税は7月・11月が中心)も異なるため、混同しないよう注意しましょう。
会社員が転職・退職した場合、住民税はどうなる?
特別徴収は、在職中の給与から天引きする仕組みのため、退職すると天引きの元がなくなります。残っている住民税額をどう扱うかは、退職する時期によって取り扱いが異なります。
| 退職する時期 | 原則的な取り扱い |
|---|---|
| 1月1日〜4月30日 | 残りの税額を最後の給与や退職金からまとめて徴収(一括徴収) |
| 5月1日〜5月31日 | 5月分のみ最後の給与から通常どおり徴収(特別な手続きは不要) |
| 6月1日〜12月31日 | 一括徴収と普通徴収への切り替えのどちらかを選択可能 |
1〜4月に退職する場合は、残りの住民税額(5月分までの未徴収分)が最後の給与・退職金からまとめて天引きされる「一括徴収」が原則です。一方、6〜12月に退職する場合は、一括徴収を選ぶか、退職後は普通徴収に切り替えて自分で納付書を使って納めるかを選べます。取り扱いは会社によって案内方法が異なるため、退職時に確認しておくと安心です。
転職先が決まっている場合は特別徴収を継続できることも
転職先がすでに決まっている場合は、「給与所得者異動届出書」という書類を使うことで、特別徴収を途切れさせずに転職先へ引き継げることがあります。旧勤務先と転職先の双方が手続きに関わるため、退職前に「特別徴収を継続したい」という希望を人事・総務担当者に伝えておくとスムーズです。手続きが間に合わない場合は、いったん普通徴収に切り替わり、転職先の会社を通じてあらためて特別徴収に戻す、という流れになることもあります。
住民税が非課税になるのはどんな場合?
所得が一定水準以下の場合、住民税は非課税になります。ここでも、所得割と均等割それぞれに別々の非課税基準が設けられている点がポイントです。
目安として、扶養親族のいない単身者で給与収入のみの場合、令和8年度(2026年6月〜2027年5月に納める住民税)は次のようなラインが目安になります。
– 均等割が非課税になるライン:給与収入100万円程度以下
– 所得割が非課税になるライン:給与収入110万円程度以下
つまり、収入が増えていくと、まず均等割(年5,000円)から課税され始め、もう少し収入が増えると所得割もかかり始める、という2段階の仕組みになっています。扶養している家族がいる場合はこれらの基準がさらに高くなり、また非課税限度額は自治体によって基準額が異なるため、あくまで目安として捉えてください。
所得税の基礎控除は引き上げ、住民税の基礎控除は据え置き
近年の税制改正では、所得税の基礎控除(きそこうじょ、すべての納税者が所得から差し引ける控除)が段階的に引き上げられており、令和8年分の所得税では、多くの会社員が該当する区分(合計所得金額489万円以下)で基礎控除が104万円まで拡大されています。
一方、住民税の基礎控除は43万円のまま据え置かれています。「地域社会の会費的な性格が強く、行政サービスの財源を確保する必要がある」という考え方から、令和8年度税制改正でも住民税の基礎控除は引き上げの対象になっていません。同じ「基礎控除」という言葉でも、所得税と住民税とでは金額がまったく異なる点は覚えておくとよいでしょう。
さらに、給与所得控除(給与収入から必要経費相当額として差し引かれる控除)の最低保障額についても、令和8年中の所得を対象に一時的に74万円まで引き上げられる措置があるため、前年課税のタイムラグを経て、令和9年度(2027年6月〜)の住民税では、均等割の非課税ラインが110万円程度、所得割の非課税ラインが119万円程度まで、さらに引き上げられる見込みです。所得税の「壁」が変わった翌年に、住民税の「壁」も1年遅れて変わっていく――これも前年課税の仕組みによるものです。
配偶者控除・扶養控除など「年収の壁」全体の変化については、以下の記事で詳しく整理していますので、あわせてご確認ください。
まとめ
住民税の仕組みを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 会社員 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 徴収方法 | 特別徴収(給与天引き) | 普通徴収(自分で納付) |
| 納付回数 | 年12回(6月〜翌5月) | 年4回(6月・8月・10月・翌1月)、一括納付も可 |
| 税額を知るタイミング | 5〜6月頃の住民税決定通知書 | 5〜6月頃の税額決定通知書・納付書 |
| 課税の基礎 | 前年(1〜12月)の所得 | 前年(1〜12月)の所得(確定申告の内容) |
住民税は、所得税以上に「前年の所得が翌年に反映される」というタイムラグを意識しておくことが大切です。特に転職・退職のタイミングや、収入が大きく変わった年の翌年度は、想定より住民税の負担が重く感じられることがあります。あらかじめ仕組みを理解しておけば、資金繰りや家計管理の面でも慌てずに対応できるはずです。
自分が今どちらの立場(特別徴収・普通徴収)にあるのか、今の住民税がいつの所得をもとに計算されているのかを押さえておくだけでも、給与明細や納付書を見たときの理解度は大きく変わってきます。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。個別の税額・手続きの詳細はお住まいの市区町村や税務署にご確認ください。
【筆者プロフィール】現役監査法人勤務の公認会計士。CPAラボ(cpalabo.com)にて会計・簿記・キャリア・お金に関する情報を発信中。


